一歩テイストを変えたら結構重い題材
でもそれをポップに繊細に描いているところに惹かれました

撮影/川野結李歌

──いろんな人を演じてきたわけじゃないですか。そういう人物像は、どんな風に探っていくんですか。

榊さんについては、周りの人たちが台詞にしてくれているんですよ。私は「そうか、そうか」と思うだけです(笑)。

(人物を捉えるのは)難しいですよね。でも私は直感的なものしか信じていないタイプなんです。(脚本を)読んだときの第一印象で。今回は、登場人物にいろんなクセ者がいっぱいいたので、みんなどういう空気感で来るんだろうと。この人は、こんな色なんじゃないかと直感で“見えた、感じた”だけでクランクインを迎えました。そこは大きかったかもしれないです。

──ヘンな映画ですよね。色で言えば、いろんな色が混じり合っていて。

なかなかないですよね。重くもあるし、ポップでもあるし、シュールでもある。私はとても好きでした。

──面白いところをすり抜けていく“水路”みたいなものがあるんですよね

感情の流れが、どこか救ってもらえるような瞬間があるというか。人って溜まるものは溜るじゃないですか。それをさーっと流してくれそうな時間の流れ方をしてるというか。

ストレスを抱えずに帰れる映画です。映画って、あれってこうだったのかな?って、いろいろ考えたりするじゃないですか。でも、そうじゃなく、すっと帰れる(笑)。

撮影/川野結李歌

──榊さんって、あるトラウマを抱えているけれど、自分本位に生きてきた人ではないですよね。悲劇の主人公として、自分を捉えてはいない。直達のこともちゃんと考えてあげられる。そこが素敵だなって。

いい具合の作品テイストなんですよね。思ったより、さっぱり気持ちよくて。じわじわ物語が進んでいって、観ている人にも、じわじわ届く。

一歩テイストを変えたら結構重い題材ではあるんですけどね。私は(役柄として)重いものをいただくことが多いから、(脚本を)読んでいて、また重い役が来たかな……と思ったのですが、こんなにポップに繊細に描くということがこれまではなかったから、それに惹かれてやりたくなりました。

榊さんは、“自分を知ってもらう楽さ”をこの年齢(26歳の設定)で知ったというか。甘えられる人がいない人も多いじゃないですか。特に親のことって、いろんな親子の形があるから、(誰に話しても)察してはもらえても、知ってもらうことって不可能だろうなって思うけど。

目の前の直達を通して、自分が抱えていたピュアな感情を遅れて目の当たりにしたら……私もそこまで経験したことないから分からないですが、直達くんが榊さんの代わりに泣いてくれているようなシーンは、気持ちいいほどちゃんと悲しんでいるマインドに救われたし、だから言えた台詞もあるんですよね。

現場に行ってみないと、どうなるか予測がつかないシーンが多かったなって思います。でも、ヒントはいろんなところにあったなって。

撮影/川野結李歌

──広瀬さんの演技には俯瞰的な視点があるなと、いつも感じます。そこも信頼できる点です。重い役が多いことについてはどう感じていますか。

私、そんなに可哀想に見えてるのかなぁ?って思いますね(笑)。明るい作品もあるんですよ。でも、悲しい設定が多いんです、映画でもドラマでも。それに、なぜか役名はカタカナが多いですね。

──ある傾向はありますね。でも、全て、広瀬すずにしか演じられない役だと思います。

同世代の女優さんたちにはある幸せオーラがないのかな?(笑) でも、嫌じゃないですよ。幸せになれる役をやりたいなとは思うけど、演じているときは(重い役も)楽しいです。

ヘアメイク/奥平正芳 スタイリスト/Shohei Kashima
衣装協力/ワンピース(AMERI/Ameri VINTAGE)、右耳ピアス(little emblem/E.M.青山店)

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作品紹介

映画『水は海に向かって流れる』
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ライター/ノベライザー。「週刊金曜日」「UOMO」「T.」「シネマスクエア」などの雑誌、T-SITE、リアルサウンドなどのネット、日本映画の劇場用パンフレットなどに寄稿。楽天エンタメナビで週刊SMAP批評「Map of Smap」を3年5ヶ月にわたって連載。草彅剛主演作のノベライズ『嘘の戦争』(角川文庫)が3月10日に発売。