SMAP最新のオリジナルアルバム『Mr.S』(2014年)序盤に「無我夢中なLIFE」という曲が収録されている。そこには耳に残るフレーズが残された。<オモシロキコトモナキ世ヲオモシロク>。これは幕末を駆け抜けた高杉晋作、辞世の句の引用だ。

面白いことのない世の中を面白くするのはあなた。SMAPはここでそのように歌っている。いまにして思えば、まるでその後の動乱の果て、途方に暮れるわたしたちに向けたメッセージにも思える。

辞世の句とは、この世との別れの言葉であり、未来への遺言である。不在の者からの、いまを生きる人々への伝言。

SMAPは日常を肯定する歌を歌い続けた。その底辺には、ある種の諦念が横たわっていたように思う。諦念があったからこそ、日常を肯定し続けることができたとも言える。

振り返ってみれば、SMAPには辞世の句ならぬ、「辞世の曲」とも言うべき楽曲がある。

歌というものの受け取り方は人それぞれだが、わたしはこれらの曲にSMAPならではの諦念を色濃く感じるし、SMAPが若い頃からこうした諦念を抱えてきたからこそ惹かれてもいた。

独断と偏見で、SMAP辞世の10曲を選んだ。発売順に紹介しよう。

さり気なく、深い、“大人”の意味―「それが僕の答え」

まず、「それが僕の答え」(1995年。アルバム『SMAP 007~Gold Singer~』収録)。

まだSMAPが6人だった頃の曲だ。この年は、神戸で大きな地震があり、オウムが地下鉄でサリンをばら撒いた。日本中が傷つき、疑心暗鬼に駆られていた。
この曲はアルバムの最後に流れる。いちばんラストはインストのテーマ曲なので、アルバムを締めくくる歌が「それが僕の答え」だ。

それが僕の答え。辞世の曲にふさわしいタイトルだが、別にSMAPはここで大仰なことを歌っているわけではない。
終電で学生時代の友人を見かけた。酔って寝ている。起こさなかった。
そんな歌だ。

主人公は振り返る。放課後はよく一緒に遊んでいた相手なのに、何となく離れていったこと。いまは住んでるところも、仕事も違うこと。そして、もう自分たちより若い世代が職場にも増えてきて、歳をとっていくことを実感していること。

自分の過去に遭遇して、いまの我が身を振り返るという出来事は普遍的なことだ。この歌には、そのようなほろ苦さが幾重にも折り重なっている。

ほんとうは、そんな話を語り合ってみたい気もする。いまは働く者同士、あの頃とは違った意識の共有もできるかもしれない。

だが、主人公はこう続ける。
今度にしよう。とりあえずお互い元気でいよう。今日は寝かせてあげるよ。ちょっとした大人の計らいだ。生きていればまた逢えるだろう。

彼が、その友達と出くわすことは、これからの人生でもう二度とないかもしれない。彼はそのことを自覚している。だが、とりあえず今日のところは寝かせてあげることを選択する。
それよりも、ちゃんと起きなよ、と心の中でつぶやく。主人公は、友人より先に下車した。

大人の計らい。大人の心配。大人の優しさ。
歌には大人という単語が続く。
大きくなれば大人になれるわけでもないことに、主人公はもう気づいている。大人になれるかな。大人にならなきゃいけないんだけど。ゆるやかな不安と、なんとなくの憧れが、大人という言葉に託される。

彼にとっては、久しぶりに逢った友人を起こさないこと。それが大人になるということだった。
さり気なく、深い。
「それが僕の答え」は、「それがSMAPの答え」と読み解くこともできるかもしれない。
おやすみなさい。生きてればそのうち逢うでしょう。

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