みえてきたスマートフォンと周辺機器の連携、「日本のメーカーにもチャンス」

2013.11.11 11:26配信
BCNの奥田会長(左)と道越アナリスト

9月上旬にドイツ・ベルリンで開かれた世界最大級の家電見本市「IFA 2013」。そこで発表された製品が、年末に向けて次々とリリースされている。改めてIFAのトピックスを振り返りながら、デジタル家電市場で始まっている新たな動きについて、BCNの奥田喜久男会長と道越一郎エグゼクティブアナリストが語り合った。

●IFAの最大の目玉はスマートフォンと4Kテレビ

奥田 IFA(ドイツで毎年開催される世界最大級の家電総合見本市)に参加したそうだね。

道越 今年の最大の目玉は、スマートフォンと4Kテレビでした。スマートフォンは、サムスン電子(サムスン)やソニー、HTC、TCL集団などが出展していました。なかでも一番派手だったのが、サムスンです。開幕の2日前になる現地時間の9月4日から、プレス向けにいろいろと発表があったわけですが、サムスンはメッセベルリンの展示場とは別に、おそらく1000人以上は入る大きなホールで発表イベントを開催しました。ニューヨークのタイムズスクエアに設けたイベント会場でベルリンの模様を同時中継して、場を盛り上げていました。一方でソニーは、メッセベルリンの展示場にスペースをつくって、登壇した平井一夫社長兼CEOが新製品を説明していました。わんさかいたので正確にはわかりませんが、参加者は数百人規模だったと思います。

サムスンの目玉はスマートフォン「GALAXY Note 3」で、同時にウインドウを開けるといった新しい機能を実装しています。でも、革新的な新しさはあまり感じませんでした。会場の雰囲気は、ところどころで歓声が沸くというアップルの発表会に似せたような感じでしたね。もう、スマートフォンとしてはかなり機能が充実してきているので、なかなか革新的な新しさを打ち出すのは難しいのでしょうね。興味深かったのは、腕時計型端末の「GALXY GEAR」です。

奥田 直感的にいって、アレ、どうなの。

道越 まだまだ発展途上という感じですね。まず、不格好。時計は身につけるものとして重要じゃないですか。あんまり格好よくないとつけたくない。ソニーも「SmartWatch 2」を展開していますが、ちょっとぶ厚くて、無理矢理モニタをつけた感じで、こちらもまだまだこれからという印象でした。

ソニーの平井社長は「腕時計のようなウェアラブルなものが発展していく」と、マスコミのラウンドテーブルで話していました。「からだっていうのは不動産価値が高いんだ」と。不動産というのはソニーの用語で、要するにからだは非常に価値が高い。腕時計を5、6個身につける人はいませんよね。腕時計型端末でしっかりとからだの不動産を取っていきたいというわけです。

奥田 不動産にたとえたのはおもしろいね。

道越 4Kテレビに関しては、ほぼすべての主要メーカーが出展していて、品質もちょっと観ただけではそんなに差は感じられませんでした。中国のTCLやハイセンスを含めて110インチの4Kテレビが登場しているなかで、各社はもう次のステップに移っている印象です。有機ELの4Kや、没頭感を得るために画面を湾曲させた4Kが新しい付加価値として登場していました。

奥田 今回のIFAならでは、というトピックスはないの。

道越 個人的にはリコーのカメラです。「RICOH THETA(リコー・シータ)」という魚眼レンズが二つついているスティック状のカメラで、上下左右360°の風景を撮れるんです。リコーは、「全天球データカメラ」と表現しています。

奥田 おもしろそうだね。

道越 おもしろいですし、これまでになかった製品です。カメラを動かしながら撮るというのはありましたが、固定したまま撮ることができるというのはなかった。さらに新しいのは、スマートフォンと連携して初めて成り立つという点です。スティック状なので、モニターも何もついていない。撮った写真の確認もできない。ワンショット撮れたら、スマートフォンに転送して、見たり加工したりして楽しむ。要するに、カメラ単体では成立しないけれども、スマートフォンとセットにすることで初めて機能する製品というわけです。

奥田 価格は決まっているの。

道越 リコーのオンラインストアで4万4800円です。ちょっと高いですが、これまでにないまったく新しいカメラと考えると、ちょうどいい値段かもしれません。非常に新しい発想なので、どうしてつくったのかを担当者に聞いたのですが、「写真を撮れば、こんな食事したとかをSNSで伝える。食事のカットだけでもいいけれど、どこで食べたとか、自分も映り込みたいとか、全体の雰囲気を含めていまの状況を人に伝えられないかと考えた」ということでした。「結論として、360°撮れればいいじゃないかということで、開発することになった」と。

写真は、ご承知の通り、切り取る芸術といわれます。それを真っ向から否定するカメラですが、記者発表のときにマイクロソフトの関係者がビデオ出演していて、「とにかく構図を考えなくていい。シャッターを切ればいい」と絶賛していましたね。

奥田 ほかのメーカーは開発していない?

道越 考えてはいると思いますが、360°全天球型データカメラというのはないんじゃないですかね。パノラマで撮るのはあっても、上下含めてっていうのはなかなか技術的に扱いが難しいらしいです。地球儀の裏に写真を貼るイメージになるので、それを中から見るという画像処理だと聞きました。

スマートフォンと組み合わせるという新しさでは、ソニーからも発表がありました。新形状のデジタルカメラ「DSC-QX100」と「DSC-QX10」です。交換レンズのような形状で、Wi-Fi機能もメモリカードも入っていますが、モニターはついていないので、そのままでは写真を撮れない。スマートフォンとカチャッとくっつけるようなかたちで撮ります。まず、スマートフォンありき、なんです。開発側としては、「スマートフォンだけではレンズやセンサの制約できれいな写真を撮るのはなかなか難しい。だったら、レンズだけ別にしちゃえばいいという発想で、レンズ単体で売り出した」そうです。

スマートフォンはかなり普及が進んでいて、高度なコンピュータになっています。このなかに、いろいろな処理能力、アプリケーションがあって汎用機として使える。いま、我々が持っているスマートフォンが個人の一番身近にあるコンピュータということになるので、それありきで、いろいろなデバイスと連携していく可能性がみえてきたと考えています。「THETA」とレンズ型カメラはその象徴ということで、おもしろかったですね。

●NTTドコモのiPhone採用は終わりの始まり

奥田 そうすると、スマートフォンでの天下取りは真剣に考えた方がいいと。スマートフォンから撤退したメーカーはどうなるのかな。

道越 今後は、スマートフォンにくっつけるデバイスをつくることになるでしょう。ただし、いまはスマートフォンという呼び方でも、果たしてこれからも「電話」であり続けるのかという疑問があります。通話の時間は徐々に減ってきていますし、電話というよりも携帯情報端末としての性格がものすごく強くなってきています。そうすると、これからはこれまでとちょっと違った展開がありうるんじゃないかと思います。

アップルが「iPhone 5s」「iPhone 5c」を発売しましたけれど、CPUが速くなったとか、機能が付加されたとかの一方で、それほど新味がないというか、これまであった革新的な要素が感じ取れない。行き着くところまで行ったという感じがあるので、次の展開が必要だと思うんですよね。ウェアラブルではないですが、ほぼ身につけているくらいの感覚で持ち歩いているデバイスですから、そうした特徴をどのようにうまく生かして展開していくかが重要です。

奥田 「iPhone 5s」「iPhone 5c」はどれくらい伸びると思う。

道越 相当動くと思います。半年くらいは。ドコモの「iPhone」取扱いで、販売数量は非常に伸びます。ドコモユーザーで、「iPhone」を待っていた層がいるわけですから。でも、以前ほど「iPhone」の神通力は強くなくなっている。

奥田 この1年で、スマートフォンの次の動きが出てくる可能性はないかな。

道越 スマートフォンはまだホットな市場なので、各社とも力を入れてくると思いますが、ずっと集中してやっていると、いつかはガタッと落ち込むことになるでしょう。日本では、NTTドコモが「iPhone」を採用しましたが、変な言い方をするとパンドラの箱を空けてしまったというか、これで一つの終わりの始まりだと思っています。

奥田 どうして。

道越 スマートフォン市場は、いま頭打ちの状況です。ドコモのiPhone取扱いで多少活性化すると思いますが、あまり長続きしない。キャリア同士の顧客の奪い合いになります。従来型携帯電話が終焉したときに叩き売りして、各社が疲弊していったのと同じことがスマートフォンでも起きるでしょう。

電話から離れて、生活の中心となっていく新しいコンピュータデバイスを開発できれば、業界の地図が変わるきっかけになるでしょう。その意味では、日本のメーカーにもチャンスがあると思うんです。ソニーはそこをよく理解していた。平井社長は、「ソニーの技術をすべて集約したのが、この『Xperia Z1』だ」という話をされていて、時流を捉えていると感じました。

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