宝塚歌劇月組公演「MUSICAL『THE MERRY WIDOW』」 撮影:岸隆子

宝塚歌劇専科スター・北翔海莉(ほくしょう・かいり)と月組選抜メンバーの出演で贈るミュージカル『メリー・ウィドウ』が、11月23日、大阪・シアタードラマシティにて幕を開けた。

宝塚歌劇月組公演「MUSICAL『THE MERRY WIDOW』」のチケット情報

本作は、1905年にウィーンで初演されたオペレッタで、ウィーンでは初演以来、年末恒例の作品として上演されている人気作。20世紀初頭のフランス・パリを舞台に、ポンテヴェドロ王国の未亡人ハンナが持つ莫大な遺産をめぐる、恋の駆け引きを描いたラブコメディだ。宝塚歌劇では、ハンナのかつての恋人ダニロを中心に物語が展開。ダニロとハンナの恋模様に、パリ駐在大使ツェータ男爵とその妻ヴァランシエンヌ、ヴァランシエンヌの元恋人カミーユの三角関係が絡み合い、それぞれの想いがすれ違っていく。歌・芝居・ダンスと3拍子そろった北翔を中心に、凪七瑠海(なぎな・るうみ)、星条海斗(せいじょう・かいと)ら、月組メンバーが好演を見せている。

舞台は、原作であるオペレッタの優美さを残しながら、宝塚歌劇らしさも加味された華やかな雰囲気。ダニロを演じる北翔は、登場シーンから圧倒的な歌唱力で聴かせる。ダンスも、デュエットのワルツではしなやかに、男役だけのダンスシーンでは力強く。繰り広げられる会話も軽妙で、観ているうちにどんどんと惹き込まれていく。

北翔の活躍に加え、ツェータ男爵を演じる星条が芸達者ぶりを遺憾なく発揮。抜群のテンポ感で、58歳の男爵をコミカルかつ渋みある演技で魅せる。また、凪七はヴァランシエンヌの心を取り戻したいと悩むカミーユ役。凪七が醸す真っ直ぐで繊細な雰囲気がカミーユにぴったりだ。さらに、ハンナ役の咲妃(さきひ)みゆは、美しくも気が強いマダムの空気感を、ヴァランシエンヌ役の琴音和葉(ことね・かずは)は、カミーユとツェータ男爵の間で揺れる心を丁寧に表現。それぞれの個性がじっくりと堪能できるのも、選抜メンバーによる公演ならでは。

美しいメロディーの数々に、笑いも散りばめられたテンポのいいストーリー、優雅なワルツや心躍るフレンチ・カンカンと、ダンスも盛りだくさん。かつては恋人同士だったダニロとハンナ、カミーユとヴァランシエンヌ、二組の恋の駆け引きが“恋のから騒ぎ”的雰囲気で楽しめる、大人の恋愛ドラマに仕上がっている。

12月1日(日) まで梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演中。チケットは発売中。

取材・文:黒石悦子