「夫婦げんかは犬も食わない」とは、よく言ったもの。一番近しい他人だからこそ生まれるやりとりは、洋の東西を問わず大いに感じるものがあるのではないか。フランスで生まれヨーロッパ各地で好評を博している『それを言っちゃお終い』は、六本木トリコロールシアターのレパートリー作品としてさまざまな形式で上演されている。今回はドラマ・リーディングでの公演だ。

夫である“彼”役は平田広明。白樹栞プロデューサーの切望により、出演が叶った。その妻、“彼女”役は坂東巳之助と中村米吉のダブルキャスト。彼らの起用は平田の提案だったという。アニメ『ONE PIECE』でサンジを演じている平田は、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』のサンジ役・中村隼人を通じて巳之助とも親しくなったそう。「以前女性の役を男性が演じたのが良かったとプロデューサーより聞いたので、じゃあ歌舞伎役者にやって頂くのもいいんじゃないかと、みっくん(巳之助)にお話をさせて頂いた」という平田に、巳之助も「米吉くんは特に女形の拵えをしなくても可愛らしいので、僕は別の方向性で、違いが出た方が面白い」と応じる。平田との共演も「短い時間の中でいい具合に刺激をいただきたい」と意欲を見せた。
 
俳優夫婦の長年に渡るやりとりを、15景で描く本作。平田は「上質な会話劇だけど日本とは違う文化で、下品な会話も含めてウィットが効いている。演じる側としても難しいけれど観る人にも想像力が求められるから、人によってとらえ方が変わってくるのでは」と感じたという。巳之助も「何気ない会話のようでいて、短いセンテンスや繰り返しの部分に実は意味がある。隠れているキーワードをひとつひとつ拾っていくと、ものすごく膨大」と、戯曲の手ごわさを実感しているようだ。
 
「歌舞伎役者さんとセッションする機会はそうない。彼らのお芝居に間違いはないので、僕は安心して身を委ねます。ワクワクしている僕を観に来てください」と平田が言えば、「何が起こるか、演じてみないとわからない。だからこそ『何が起きるのかな』と確認しに来てもらえたら」と、巳之助も異色の組み合わせのキャストで起こる化学反応が楽しみなよう。一方白樹プロデューサーも、遠隔地から問い合わせがあるなど期待の大きさを実感しているそう。「ぜひ同じキャスティングで再演したい」と今後の展望を語った。
 
そんな大人向けのドラマを、ぜひ六本木で。公演は8月21日(月)~8月27日(日)まで。