新市場で堂々と看板を掲げる補身湯専門店

日本の人に「観光したことのある韓国の街は?」と聞いたら、ほとんどの人が首都ソウルと答えるだろう。

次いで釜山、済州。世代によっては中学高校の修学旅行で慶州に行っている人もけっこういそうだ。

その次となると、一時期、ソウルから無料シャトルバスが運行されていた全州や、ブロガーたちの地道な広報活動で注目された大邱だろうか。

この6つの地域と比べると、観光資源は豊かなのに行ったことのある人が少なそうなのが安東だ。

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  • 聾巖宗宅の朝の風景
  • 両班宅を宿泊所として開放している聾巖宗宅の個室
  • 聾巖宗宅(ノンアムジョンテク)で両班宅の銘酒「一葉扁舟」をいただく
  • 月映橋の中央にある月影亭というあずまや
  • 霧に煙る月映橋(ウォリョンギョ)

儒教文化のゆりかご、両班(朝鮮王朝時代の支配階級)文化の故郷、仮面劇などの民俗文化など、お堅いイメージがつきまとう安東だが、じつはふらっと旅しても楽しめる街だ。

先日、久しぶりに訪れたので、その魅力をお伝えしよう。

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  • 「一字山酒幕」の豆腐キムチ
  • 「一字山酒幕」の干し鱈(手前)
  • 「一字山酒幕」のビニールハウス(初夏)
  • 「一字山酒幕」のビニールハウス(秋)
  • バギー車の後部に掲げられた、マッコリ酒場「一字山酒幕」(通称)の案内看板。正式な店名は「一字山カフェ」(秋)

 

二つの安東駅

まだ現役感が残っている旧・安東駅舎

ソウルの清凉里駅を出た列車は、楊平、堤川、丹陽などを抜け、地図上では右斜め下に南下し、約2時間で慶尚北道の中央寄りにある安東駅に到着した。

駅舎は2020年、安東市郊外に建てられたので新しい。ロビーに流れる歌は2012年に大ヒットした「安東駅で」という演歌だ。雪の夜、現れない恋人を安東駅で待ち侘びる気持ちを唄った歌で、安東の認知度アップに貢献した。

歌詞の中の駅は郊外にある今の安東駅舎ではなく旧市街にあった安洞駅舎だ。

1931年から90年以上、安東の玄関口としての役割を果たしたが、今は文化センターとして使われている。

線路は撤去されたが、プラットホームはそのまま残されている。

旧市場は安東チムタク(鶏肉と野菜の甘辛炒め)の発祥地

「元祖安東チムタク」のチムタク

安東市内には旧市場と新市場、二つの市場がある。旧市場には1970年代から、生きている鶏やトンタク(鶏の丸揚げ)とマッコリなどを売っていたトンタク通りがあった。

そこで生まれたのが安東チムタクという料理だ。鶏肉をジャガイモやニンジンなどの野菜、春雨といっしょに甘辛く煮た食べ物である。

2000年頃、安東のローカルフードだったチムタクが全国的なブームになり、ソウルにも多くの専門店ができた。久しぶりに本場で食べてみよう。

平日の午後、市場は閑散としている。ブームは去ったとはいえ、グルメ番組出演を謳ったポスターを競うように貼った専門店がずらりと並んでいる。

そのなかから、1985年創業と書かれた店「元祖安東チムタク」に入った。創業当時は小さかった息子が恰幅のよいおじさんになり、母の後を継いでいる。タレはソウルにあるチェーン店より甘くなく、素朴な印象だ。それでもしっかり辛く、ビールが進む。

サイドメニューのガーリックチキンも頼んでみた。他の地域では揚げる段階でニンニクを使うことが多いが、ここでは揚がったチキンの上に刻んだ生ニンニクがたっぷりかけられて出てくる。

「元祖安東チムタク」のマヌル(ガーリック)チキン

ニンニク自体にまろやかな甘さがあるからできることだ。匂いなど気にせずニンニクをもりもり食べられるのが我が国の食の魅力である。