ロシオ・モリーナ ロシオ・モリーナ

1984年生まれ。まだ20代という若さながら、「21世紀のフラメンコ舞踊は彼女なしには語れない」とも称される若手ナンバーワンの舞踊家、ロシオ・モリーナ。彼女がマリア・パヘス舞踊団から独立後の処女作『Enter Paredes(壁の間)』を発表して丸10年となる来春、“革新”を貫いた10年間をたどる「ロシオ・モリーナ舞踊団-10年の軌跡-」が、東京・Bunkamuraオーチャードホールで世界初演される。世界的トップダンサーがなぜ自身の記念碑的作品を日本で初演するに至ったのか? 10月12日から14日に行われた「フラメンコ・フェスティバル」で来日していた彼女を直撃した。

「ロシオ・モリーナ舞踊団-10年の軌跡-」チケット情報

取材場所ににこやかに現れたロシオは思いのほか小柄でキュート、そして現代的な印象。数日前、「フラメンコ・フェスティバル」の舞台上で、圧倒的なオーラを放って舞っていた女性と同一人物とは思えないほど。「舞台の上は、何をやっても上手くいく“魔法の空間”。気持ちの上ではそう思っています。そこで踊っているときとこういう普段のオンオフの切り替えは、最近やっと上手くなってきました。普段の自分が、ワーカホリックなロシオ・モリーナをちょっと笑ってみたりね(笑)」

来日は2度目だそうだが、「日本が大好き。何か特別なつながりを感じる」と言い、自身でも説明のつかないその不思議な感覚が、東京でのワールドプレミアにつながった。「10代の頃から、日本の踊りの経験があるんじゃないかと周りに言われたりして。習ったわけではなく意識してもいなかったけれど、私の動きの中に似たものを感じる人が多かったんですね。そして私自身が日本という国を知ると、食べ物にしても本にしても映画にしてもすごく好きなモノが多い。だから自分とのつながりを発見するためにも、この滞在中に歌舞伎とかいろいろな日本の文化に触れるつもり。きっと何かインスピレーションを与えてくれると確信しているし、今度の作品に反映される可能性も十分ありますね。そういう私のこれまでのキャリアやオリジン、そして私自身を知っていただきたくて、いわば日本の皆さんのために作る作品です」

彼女がこの10年間で発表した10作からのハイライトを集めながら、ミュージシャンもベストメンバーで贈る、まさに10年の軌跡となる新作だと言っても過言ではない。「この10年を振り返ると、変わってしまって取り戻せない部分もあってメランコリックな気持ちにもなったけれど、そうしたことを思い出しながら、今の自分で(過去の作品を)踊るというのもまた素敵なこと」とも語った。

小道具や音響効果を用い、情熱的でありながらスタイリッシュな世界観を確立するロシオのフラメンコは、日本人にとって画一化されたフラメンコのイメージをしなやかに覆す。キュートでカッコいいバイラオーラ(女性舞踊手)が切り拓く、コンテンポラリーなフラメンコをこの機会に体験しない手はない。

公演は2014年4月18日(金)・19日(土)東京・オーチャードホールにて。チケットの一般発売は1月17日(金)午前10時より。