倉本聰が長年の思いを込めて放つ『マロース』とは?

2013.12.13 20:13配信
倉本聰 倉本聰

倉本聰作・演出による富良野GROUP公演『マロース』が、1月から富良野を皮切りに全国で上演される。開幕を前に、倉本に都内で話を訊いた。

富良野GROUP公演『マロース』チケット情報

『マロース』は、2009年12月にNHKで放送したラジオドラマをもとに2011年1月に富良野で舞台化された新しいレパートリーだが、その原点は80年代にさかのぼる。「レイチェル・カーソンの『沈黙の春』という本に出会って、モチーフにしたいと前々から考えていたんですけど、当時の僕の技量ではどうすればいいのか、想像がつかなかったんです」と倉本は言う。機が熟すまで、事を急がない。そうして膨大な検討を経て練り上げられた『マロース』には、隅々にまで作者の感性が息づいている。

「描いたのは白鳥の話です。シベリアから日本に越冬しに来る白鳥を見て、あれだけの吹雪の中、どうやって渡りをするんだろう。若くなくなった白鳥はどうやって飛ぶんだろうと。それともうひとつヒントになったのが、冬将軍という言葉。子供の頃に“冬将軍が来るよ”とよく聞かされて、山の向こうから大礼服を来た将軍がダーッと軍団を連れてやってくるのをイメージしていた記憶がある。それが白鳥と重なったんです」

ロシア語で冬将軍を意味するのが、タイトルの『マロース』。物語は、北海道南部の小さな町を舞台に展開する。森の奥のコーヒー店「ブナの森」に集う常連客たちの周囲には、最近、不審な出来事が後を絶たない。野鳥が大量死した原因は本当に鳥インフルエンザなのか。5月というのに春がやってこないのはなぜなのか。そして、記憶を亡くした遭難者の老人は、果たして何者なのか。

戯曲から受ける印象は、正に鮮烈といっていい。磨かれた言葉の一つひとつに血が通っていて、観る者の心を大きく揺り動かす。しかし作者は、「まだこのホンは相当、未完成です。稽古に入ってから、千秋楽までどんどん書き直していくでしょうね」と自らに厳しい。

話を聞いていて、その発想の豊かさに驚かされる。印象に残ったのは、「海抜ゼロに戻る」という言葉だ。「富士山に登ったっていう人に聞くと、みんな5合目から登ってるんですね。とにかく上へ上へ行くことが文明の進歩だと考えちゃう。山の断面で考えればわかるけど、5合目、6合目、7合目と上がるにしたがってルートは限られていく。でも4合目、3合目と下がれば断面はグンッと広くなるし、海抜ゼロに至っては、登山道の選択肢が無限に広がる。ものを考えるとき、海抜ゼロに戻ってみることが大切だと思うんです」。全景をとらえることで、突破口が見えてくる。その視座から現代日本人が教えられることは、あまりにも大きい。

1月18日(土)から2月1日(土)まで富良野演劇工場で上演された後、全国公演を経て、3月18日(火)・19日(水)には東京・光が丘IMAホールで公演を行う。チケットぴあでは、東京公演のインターネット先行抽選「プレリザーブ」を実施中。12月16日(月)午前11時まで受付。

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