『ゼロ・グラビティ』の製作を手がけたデイヴィッド・ヘイマン

サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが共演する映画『ゼロ・グラビティ』が日本でも公開をスタートし、大きな反響を呼んでいる。まるで実際に宇宙空間で撮影したかのような驚異的な映像と、胸をうつドラマに高い評価が集まっているが、製作の道のりは決して平坦なものではなかった。アルフォンソ・キュアロン監督のアイデアと熱意を受け、監督を信じて映画を完成まで導いた人物がいる。それがプロデューサーのデイヴィッド・ヘイマンだ。

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ヘイマンは英国出身の映画プロデューサーで、『ハリー・ポッター』シリーズ全作を手がけたことで知られている。キュアロン監督とはシリーズの3作目『…アズカバンの囚人』でタッグを組んだが、彼は最初に脚本を読んだ段階から「この映画は素晴らしいものになると信じていた」と振り返る。「監督が優れた才能の持ち主であることを私は知っています。だからビジネスの成功はわからないけど、クリエイティブの面での成功は確信していました。『ハリー・ポッター』だって結果的に成功しましたけど、映画の成績は事前にわかるようでわからないものですから」

しかし製作は決してすんなりとは進まなかった。無重力空間で縦横無尽に動くカメラ、まるで宇宙にいるかのような映像空間を生み出すため、監督とスタッフたちは試行錯誤を繰り返した。「私が関わった作品の中でも少し不思議なプロジェクトでした。技術的な側面の大きい作品ですから『この映像をどうやって実現すればいいんだろう?』と考えている段階で、何も目に見えるものがないのにスタジオから資金を引き出さなければならない。それが私の仕事でした」それでもヘイマンは監督の才能を確信していたようだ。「技術的には複雑でしたけど、映画に人間性がなければ技術を駆使しても意味がないですよね? でもこの映画には“感情”があった。スリルはあるけど、主人公のライアン・ストーンと“感情の旅”ができる映画でした。私はいつも自分の心が作品とつながれるようなプロジェクト参加していることにしています」

ヘイマンが信じ、スタジオと交渉を続ける中で生み出された映像は全世界の映画ファンを驚かせた。「私がこの映画で気に入っているポイントは、ビジュアルエフェクツがこんなに使われているのに、使われていると感じさせないところです。それほどにリアルなんです。モンスターが出てくるわけでもないですしね」

すべての映像技術と試行錯誤は“感情”を描くためにある。ヘイマンの揺るぎない信念は、本作を完成させる上で大きな役割を果たしたようだ

『ゼロ・グラビティ』
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