ウィットとロマンが交錯する元祖『オペラ座』が開幕

2013.12.25 18:34配信
ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』 撮影:岩村美佳(Mika Iwamura) ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』 撮影:岩村美佳(Mika Iwamura)

12月19日、ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』の9年ぶり5度目となる来日公演が、東京国際フォーラムにて開幕した。数ある『オペラ座の怪人』の中で、ケン・ヒル版の特徴のひとつはユーモアにあふれていること──公演チラシやプロモーション記事などで、情報としてそう認識している人は多いだろう。だが実際に観ると、おそらく誰もが「ここまでだったとは」と思うであろう舞台だ。前日に行われたゲネプロに潜入した。

ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』チケット情報

役名とキャスト名が登場順に書かれたキャスト表によると、タイトルロールであるファントムが登場するのは、14人中13番目。ファントムが想いを寄せる歌姫クリスティーヌとその恋人ラウルはもとより、支配人、歌手、裏方ら、オペラ座関係者一人ひとりに濃厚なキャラクターが設定され、舞台は彼らのウィットに富んだセリフのやりとりを中心に進行していく。後半の緊迫したシーンで意外な登場人物同士の恋が芽生えるなど、最後まで隙なくおかしみがつまった故ケン・ヒルの脚本。それを、演出も務めるファウスト役のマイケル・マクリーンら、実力あるキャストがテンポよく表現していく。大げさに言えば、音楽を抜き去り、タイトルロールの登場を割愛したとしても、“ファントムに振り回された人々の狂騒曲”として十分上質な喜劇になりそうなほどなのだ。

それは裏を返せば、その喜劇を格調高くロマンティックなミュージカル『オペラ座の怪人』たらしめているのが、音楽であり、ファントムを演じるピーター・ストレイカーだということ。ビゼー、ドヴォルザーク、グノーら、物語の舞台である19世紀後半以降に活躍したオペラ作曲家の曲にケン・ヒルが歌詞を載せた劇中歌の数々は、「究極のクラシック・ミュージカル」と謳われる本作の中核をなすもの。セットは比較的簡素だが、劇場上方に吊られたシャンデリアと音楽が、現代の東京にいる私たちに19世紀のパリ・オペラ座をリアルに感じさせてくれる。

そして、1991年以来、断続的にとはいえ同役を演じ続けてきているストレイカーのファントムは、まさに唯一無二の存在感。前半は気配を漂わせるだけのシーンが続くが、声や手の芝居だけで強い印象を残せるのは、彼だからこそだろう。ついに全身を現して歌うシーンでは、ハスキーでセクシーな歌声と、独特の手つきと腰つきで、仮面の奥に隠れたファントムの愛と孤独を体現。特に、1幕最後の三重唱《制御できない運命》で見せた匂い立つような情熱と狂気が、オッフェンバックのドラマティックなメロディーとあいまって心に迫った。

公演は12月29日(日)まで、東京国際フォーラム ホールCにて。チケット発売中。

取材・文:町田麻子

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