人気漫画を原作に、市川猿之助が歌舞伎化したスーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『ワンピース』が、大阪松竹座で4月1日に開幕した。

スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)「ワンピース」チケット情報

2015年に新橋演舞場で初演され、大阪での上演は今回が2度目となる。昨年の東京公演では、主人公のルフィとハンコックの二役を演じる猿之助が怪我をして降板したが、この大阪公演で復活。東京公演で猿之助の代役を勤めた尾上右近とWキャスト、LED映像などの最新技術を駆使した新演出で上演中だ。

本作で描かれるのは、大人気エピソード「頂上戦争編」。大秘宝ワンピースを探す麦わらの一味は、シャボンディ諸島での海軍との戦いの中で散りぢりになってしまう。ひとりになってしまったルフィは、白ひげ海賊団の一員だった兄エースの処刑宣告の知らせを聞き、海底監獄に救出に向かう。重傷を負いながらも侵入不能の海底監獄を突破するルフィだが、エースは海軍本部に移送された後だった。そしてエースを公開処刑しようとする海軍と、ルフィや白ひげ海賊団との間で壮絶な決戦が繰り広げられる…。

冒頭の影絵の映像と音楽から期待感が高まり、第一幕から第三幕まで、どの場面も見せ場しかないほどの楽しさだ。ルフィをはじめ、麦わらの一味のひとりひとりが順番に名乗りをあげ、10人そろって見得を切る場面は鳥肌立つほどにカッコいい。立廻りでも、入れ替わり立ち替わり見せ場がある。ルフィがひとり辿り着いた女ヶ島、アマゾン・リリーでは、ルフィと女帝ハンコックを二役早替りで魅せるほか、ゴムゴムの伸びる腕ダンスを披露。さらに第一幕のクライマックスは、往年の紅白歌合戦さながらで、舞台一面にハンコックの真っ赤な衣装が広がるなど、次から次へとワクワクさせる演出が続く。

第一幕を終えて興奮冷めやらない中、第二幕、第三幕と、その興奮をさらに高める演出で魅せる。オネエキャラのイワンコフが率いるニューカマーランドでは、タカラヅカのような羽根を背負ったニューカマーの人たちが、華やかなレビューを展開。さらにその後、ステージ上に大滝が出現し、10トンもの本水を使った大立廻りが繰り広げられ、クライマックスはサーフボードに乗ったルフィが、ゆずの『TETOTE』が流れる中、宙乗りで3階後方へと進んでいく。音楽ライブのように客席もタンバリンを鳴らしながら総立ちで盛り上げる。

漫画らしいコミカルさと、歌舞伎ならではのカッコよさのバランスが絶妙で、観る者をグイグイと引き込んで離さない。楽しいばかりでなく、仲間や兄弟の絆を感じさせる場面では涙を誘う。見どころしかない上に、セリフも現代語で、歌舞伎を見慣れていない人、『ワンピース』の知識がない人でも十分に楽しめる。

初日公演前には猿之助が「大阪松竹座はコンパクトな分、より迫力を感じられると思います。滝のシーンでは1階席の真ん中くらいまで水しぶきが飛んできます(笑)。怪我のないように気をつけつつ、皆さまに楽しんでいただけるよう頑張ります」とコメント。公演は4月25日(水)まで。ダイジェスト映像も参考に、連日大盛況を見せている大阪松竹座へ!

取材・文:黒石悦子