閉じていれば傷つかずに済む。けど、何も動かない

撮影/コザイリサ

――出演作を選ぶとき、その作品が持つメッセージ性は考慮しますか。

僕は物事の好き嫌いが特にはっきりしているタイプなので、そんなことを言い始めたら仕事がなくなると思います(笑)。

「やってみたいな」と思うきっかけとなるのは、脚本とか、この人たちとやってみたいとか。一度ご一緒したことのある方々であれば、安心して任せられるとか。あとは自分にとって挑戦的なものかとか。作品の大きさよりも一役者としてやってみたいかどうかをまず考えます。

その作品を世に出すことの意義については、今やらせていただいているような宣伝活動などの際、自分の言葉として発していけるように、作品を作っていく過程や、完成したあとに考えます。

――では、改めて本作を世に出す意義を伺えますか。

この映画をきっかけにより多くの方が戦史を知ろうとしていただけたらうれしいです。学校では社会や日本史の時間に学びますけど、「日本ってどんなことをしてきたのだろう」ということを知り、その上で今、「世界はどうなっているんだろう」と、目を向けてもらえたらいいなと思います。

特に自分と同世代や、それよりも下の子どもたちが考えてくれたらいいなとは思いますが、世代を問わず、考える人が一人でも多く現れてくれたら、僕がこの映画に携われたことの意味がどんどん大きくなっていくのだろうと思います。

撮影/コザイリサ

――水上さんは個展を開催するなど、絵を描く活動もしていますが、そこにも何か伝えたいメッセージのようなものがあるのでしょうか。

絵を使って何かを伝えたいという想いはないです。画家ではないので(笑)。絵に関しては自分が描きたいと思ったときに、描きたいものを描いているので、逆に何かテーマを持って描いてくださいと言われても描けないです。

――そうすると、より素のご自身に近い表現になるのでしょうか。

自分と近いか、遠いかの二択で考えたら、近いほうではあると思います。ただ、だからと言ってお芝居が遠いというわけではないです。僕ではない人になるために、自分の感性や解釈を使っているし、そうしなければお芝居はできないので、その意味では遠くないです。

――それらの表現の源となるご自身の感性を磨くために、何か意識していることはありますか。

「開いておくこと」ですかね。世の中、知らないことだらけなので、その知らないことを知った気にならずに、常に自分の中に入ってくるように、体も心も「開いておくこと」だと思います。

閉じてる人の役を演じるのは、またそれも面白いんですけど、閉じてる人自体は魅力的とは言い難いですよね。けど、開いているとそれゆえに人に揺さぶられたり、心が弱くなったり、傷つけられたりする。だから、閉じていれば傷つかずに済む。けど、何も動かない。そのどちらがいいのかを考えたとき、僕は開いてるほうを選んでいます。


“戦争”を扱った物語ということもあり、インタビューでも言葉を選びながら、慎重にその想いを語ってくださった水上さん。その真面目で丁寧な姿勢は、ご本人は共通点がないと言いましたが、彰にもつながるものを感じさせられました。

80年近く前のお話ではありますが、現代にも共通する人が人を想い合う尊さを感じながら、今なお無くなることのない“戦争”について考えされる物語となっています。

作品紹介

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
2023年12月8日(金)より全国公開