うどんといえば讃岐。
ですが、この食べ方は讃岐うどんではありません。
四国のお隣り、九州は大分県佐伯市で愛されてきた「ごまだしうどん」です。












 

 

ネギとさつま揚げをそえましたが、
ドロドロの茶色いものが今週の主役、「ごまだし」といいます。
ごまだしは、豊後水道を望む佐伯で受け継がれてきた、ユニークな調味料。
ネーミングからすると、ごましか入ってないようですが、
魚を使っているところがいちばんの特徴です。
エソなどの魚を香ばしく焼いた後、皮や骨を丁寧に取り除きます。
その身に炒った醤油、白ごま、ミリン、砂糖を加え、
すり鉢でペースト状になるまでする。
これがごまだしです。












 

 

ごまだしうどんは、讃岐うどんとは食べ方が異なります。
茹でたうどんを丼に入れ、ネギなどの好みの薬味をのせる。
ここまでは讃岐うどんとほぼ同じですが、ここから先がまったく違います。
アツアツの汁ではなく、熱湯をかける。
その上にごまだしをのせ、かき混ぜる。
ただそれだけ。

「そんなんで旨いの? っていうか、食べられるの?」
って思いますよね、ふつう。
筆者も最初は半信半疑でした。
ところがどっこい、旨いのなんの。

一般的にうどんの汁は、カツオ節や昆布などでだしをとります。
ところが、ごまだしには、カツオ節も昆布も使いません。
魚とごまの旨味が効いているんです。
「熱湯に溶くだけで旨いのなら、お茶漬けにしてもいいんじゃないの?」
と思った貴方、正解です。
ご飯にごまだしをのせ、煎茶やほうじ茶をかけて食べるお茶漬けもこれまた旨い。

佐伯では、いろいろなメーカーがごまだしを作っていると聞きました。
今回紹介するのは、「漁村女性グループめばる」が手がけている製品です。
名前からもわかるように、作っているのは、漁師の奥さんたち。
めばるでは、その日の朝、水揚げされたエソ、アジ、タイを使用し、
3種類のごまだしを作っています。















 

 

赤がタイ、茶色がアジ、白がエソです。

先のごまだしうどんには、エソのごまだしを使いました。
でも、せっかくアジ、タイで作ったごまだしもあるので、
それぞれの特徴を活かした食べ方を紹介します。

アジのごまだしで食べる「アジのしゃぶしゃぶ」。
昆布などでとっただしを鍋に入れ、火にかける。
めんどうなら、白だし(既製品)を薄めてもいいでしょう。
この鍋で刺身用のアジや野菜などをしゃぶしゃぶし、
アジのごまだし(少量のお湯でのばしておく)をつけて食べる。











 

 

刺身用のアジはスーパーなどで売っています。
これを器に盛り直せば、もてなし料理に変身します。

同様に、タイのごまだしで「タイしゃぶ」も愉しめます。
友人や彼女を招き、新年っぽく、自宅でタイしゃぶなんてどうですか?
刺身用のタイと、好みの野菜を用意するだけ。
タイは、天然モノでも養殖モノでも予算次第。
贅沢な鍋料理も、タイのごまだしがあれば、簡単にいただけます。

もうひと工夫して、「タイ茶漬け」。
タイ茶漬けというと、それこそ料亭料理です。
どこかの料亭で食べれば、大枚をはたくことになります。
でも、タイのごまだしがあれば簡単に食べられる。
刺身用のタイの切り身をボールに入れ、タイのごまだしをまぶす。











 

 

このまま30分ほど冷蔵庫で寝かせます。
ご飯を盛った茶碗に、ごまだしがついたタイをのせ、
ワサビ(チューブ入り)を盛る。
熱い煎茶をかけたら、あとはかっこむだけ。











 

 

自宅で、あの料亭料理が味わえます。
お好みでぶぶあられ(お茶漬けの素に入っているあられ)や、
刻み海苔、三つ葉をちらしてもいいでしょう。

 











佐伯ではエソのごまだしが一般的だそうです。
用途を考えると、関東ではアジか、タイのほうが使い勝手がいいかもしれません。

エソとアジのごまだしは750円(200ml)。
タイのごまだしは1,050円(200ml)。

オンラインショップで漁村女性グループめばるが作っている、3種類のごまだしが購入可能です。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。