"韓国映画のなかの日本人"を演じた過酷な撮影現場

Photo/安藤信之
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 オダギリジョーはカン・ジェギュ監督から熱烈なオファーを受けて、韓国映画史上最高額の製作費が投じられた大作『マイウェイ 12000キロの真実』に出演することになった。けれどもはじめてプロジェクトに誘われたときの気持ちを振り返り、「自分には合わない作品だと思った」と、正直に告白する。

 「商業的な映画に参加することは避けてきたところもありますし、メジャーなものに対する嫌悪感みたいなものは昔から変わらなくあるので、そういう意味で合わないな、と感じたんです。でも監督の熱意や誠意も痛いほど感じて、応えないと悪いなという気持ちになりました。監督の撮った『シュリ』も『ブラザーフッド』も観たことがなかったのですが、韓国でも日本でもヒットした作品を作った巨匠ですよね。だから最初は偉そうな人だったらどうしようとネガティヴなイメージもあったのですが、実際にお会いするとどことなくジャッキー・チェンに似てて(笑)。話していてもソフトで優しくて、気遣いして下さる方だったので、すごくいい人なんだなと。監督の人柄も、オファーを受けた理由のひとつですね」

 舞台は第二次世界大戦末期。日本、ソ連、ドイツと3つの軍服を着て戦うことになったふたりの東洋人の物語は、監督が一枚の写真からイマジネーションを広げ、紡ぎ出したものだ。撮影には本物の銃や火炎瓶が使われたほか、ソ連式の戦車も製作され、あくまでもリアリティを追求する監督の姿勢が揺らぐことはなかった。彼が演じたのはマラソンという夢を捨てて、国にすべてを捧げた男。「何が大変だったのか、ひとつだけ思い出すのは難しい」というほど過酷な撮影環境のなか、約1年という長い時間をこの役柄とともに過ごしたことで、自分自身が侵食されるような感覚はなかったのだろうか。