中村義洋監督

新作映画『白ゆき姫殺人事件』の公開を控える中村義洋監督が3月21日、アップルストア銀座にて行われたトークセッションに出席。本作についてはもちろん、自身のキャリアやキャスティングの妙などについても語った。

トークセッションの模様

映画は、過熱報道、ネット炎上、口コミの衝撃といった現代社会が抱える“闇”に焦点を当てた湊かなえの同名小説を基にしたサスペンス。同僚の美人社員・三木典子を殺害した容疑で“疑惑の人”となった主人公・城野美姫(井上真央)を中心に、噂が噂を呼び、多くの関係者が翻ろうされる姿が描かれる。

監督は本作の仕上がりに自信を持っているようで「ここ数年の“元気を与える”といった優しい言葉は置いといて、とにかくおもしろいものを作ろうと思った」と力強く語る。井上真央、綾野剛、菜々緒など旬のキャストが顔を揃えるが「みんな、これまでこういう役をやってないというおもしろさがあった」と監督自身も意外性を楽しんだよう。特に映画初出演の菜々緒については「オーディションなのに、いきなり『この役をやらせてもらうわけですけど』という感じで(笑)、据わってましたね、度胸が」と感嘆する。

ちなみに中村監督自身、映画作りにおいて「名匠の方々も言ってますが『演出の8割はキャスティング!』と思ってるし、そこに時間をかけている」と明かす。堺雅人に鈴木福など、中村作品への複数の出演を経てからブレイクする例も数多く、この点については自身の“慧眼”に複雑な思いも? 「堺雅人も『ジャージの二人』の時はまだまだで、プロデューサーから『もうちょっと名のある人に…』と言われたんですが公開の頃にNHK大河ドラマ『篤姫』の家定役が話題を呼んだ。被害妄想じゃないけど、『半沢直樹』なんて、堺雅人、香川照之、滝藤賢一も出てて『ゴールデンスランバー』でしょ(苦笑)! 起用が早すぎるんです。損してる」と語り笑いを誘った。

いまでこそ売れっ子監督として引っ張りだこだが、下積みと言える時代も長く、監督ではなく脚本家として過ごした時期も。「自分が監督するつもりで脚本を書くと『監督は誰にしましょうか?』という話になり、傷ついた(笑)。でも脚本生活が楽しくなって、それを極めようと思ったら、仕事がなくなったり、人生は望んだ通りにならないと学んだ」と語る。

「小説の映像化の名人」と称される点についても言及。特に称賛を浴び、注目を集めるきっかけとなった出世作『アヒルと鴨のコインロッカー』について「原作を読んで、これに全てを捧げようと思った」と強い思いを語り、あくまで原作の素晴らしさがあってこその映画化の成功であると持論を口にした。

『白ゆき姫殺人事件』
3月29日(土)全国ロードショー