朝食は素朴なハンバーガーと

【台湾食べ歩きの旅 #14】見た目にはちょっと頼りない「姉妹老五冷飲」の台湾ハンバーガー。バンズはふわふわで、甘い台湾マヨネーズやマーガリンの香りがやさしい

マンゴーで喉の渇きを癒したら、本格的に朝ごはん探しに向かう。

大溝頂という古いアーケード街にサンドイッチ店があるらしいのだが、実際に行ってみると、予想以上に積年を感じさせる店だった。

午前6時にオープン。トースト、ハンバーガー、サンドイッチだけでなく、定番朝ごはんの蛋餅(卵巻き)があるのがうれしい。

ドリンクの種類も豊富で、豆乳はもちろん、紅茶、コーヒーなど無難なものから、緑豆シェーク、蓮根ミルクなどの変わり種まで20種類以上。

薄暗いアーケード内の小さな朝食店に立つのは60代だろうか、夫婦のようだが、店名は「姉妹老五冷飲」という。メニューが多いのは、客の要望に応えるうちに、あれもこれもと増やしてしまったためだとか。

大溝頂が1990年代にオープンした頃、アーケード内は人がすれ違うのがやっとなほど混雑していたらしいが、今はシャッターを下ろしている店が多く、早朝の人通りはまばらだ。

そんな中で細々と続くこの朝ごはん屋さんのハンバーガーは、欧米のハンバーガーと比べると小さくてパンチがないが、朝にちょうどいいふんわりしたバンズにベーコンや野菜が挟まっている。

脂っこくない、豆乳や緑豆といった台湾の伝統ドリンクとも相性がいい。蛋餅と冷たい豆乳も頼む。

コロナの名残なのか、店のカウンターと客席の間にはチェーンが張ってあり、客がキッチンに近づけないようになっている。

プラスチック製の頼りないピンク色のチェーンだけれど、レトロな朝食店が少しだけ物々しかった。

店主の男性は腰に太いサポーターを巻きながらキッチンに立っている。

次に高雄を訪れるときも、この静かな朝ごはん屋さんが健在でありますように。

(つづく)

みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。