(左から)矢口史靖監督、染谷将太

現在、映画界で引っ張りだこの若手成長株・染谷将太が、矢口史靖監督の最新作『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』で、ひょんなことから林業に従事することになった18歳のイマドキ男子役で主演を務めている。出演作ごとに、その世界観に染まりながら、個性豊かな存在感を放つ染谷だが、「役作りって…、いつもしないんですよ」と当の本人は涼しい顔。矢口監督も「何もしなさ加減が魅力」と太鼓判を押している。

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直木賞作家・三浦しをん氏の「神去なあなあ日常」を映画化した“青春林業エンターテインメント”。染谷演じる主人公・平野勇気は、大学受験に失敗し、美人が表紙を飾るパンフレットに誘われるまま、携帯電話もつながらない山村で一から林業の修行を始めるが…。

「台本を読んだときから、ちょっとイラっとするやつだなって。でも、どこか憎めなくて、嫌いになれない」と役柄の印象を語る染谷。演技に対する気持ちの切り替えは、あくまで「現場に入ってから」だといい、「その場で、やってみないとわからないですから。逆に台本をあまりに読み込んでしまうと、そこからイメージが固まり始めちゃうし」とこだわりを語る。

この言葉には、矢口監督も大いにうなずく。「メッセージを情報としてではなく、役者さんの表情や佇まい、要は画面に映っているものでお客さんの心に届けたい。だから、役者さんにはニュートラルでいてほしいんです。台本を読み込んで『こうすれば、面白がってもらえるだろう』と意気込まれると、それを壊すのも面倒くさいし、時間がかかっちゃう」。

撮影は昨年6月上旬から、三重県の山間部を中心に2か月近く行われた。「実際、コンビニもないし、電波も通じない場所。面白いくらい雨が降ったり(笑)。そんな環境のおかげで、たくさんの影響や刺激を受けて、自然と勇気になれた気がします」(染谷)。

「今の言葉は、本人からの『ありがとう』だと受け取ります(笑)。実際、染谷君には木に登ったり、チェーンソーで木を切ったり、吹き替えなしでやってもらいました。別にいじめたかったわけじゃなくて(笑)、そうやって愚直にまっすぐ撮ることが、今回の題材には合っていると思ったから」(矢口監督)。

『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』
公開中

取材・文・写真:内田 涼