(左から)池松壮亮、妻夫木聡

『舟を編む』で数々の賞を総なめにした石井裕也監督の最新作『ぼくたちの家族』が24日(土)から公開になる。母が末期の脳腫瘍で余命一週間と宣告された家族を描く人間ドラマだ。兄弟役として初共演を果たした妻夫木聡と池松壮亮に話を聞いた。

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生真面目な長男・浩介を演じた妻夫木はオファー時の喜びを語る。「石井監督とはずっとご一緒したかったので、ただただうれしかったですね。実際にお仕事させていただいて、自分の作品を本当に愛しているし、僕らと一緒に死んでくれる覚悟を持っている人だと感じました」。

次男・俊平役の池松は「本当は家族ものはやりたくなかった」と明かす。「家族という題材を、物語という作り物で見せるのは難しいと思うんです。でも石井監督がその割り切れないテーマのもとでやろうとしていることを前にして、やりますというしかなかったですし、ツマさんが兄貴役だということで、もう逃げ場がなかった」と出演を決意。

そして妻夫木との共演を「貯水槽への階段を上っていって物語が動き出すシーンがあるんですが、弟に対していつもあたりが強い兄貴が、あの場面でのヘッドロックは緩かったんです。その瞬間にここで来たか、と役者としてビビりました。兄と弟というものを肌で感じて、ツマさんが恐ろしくなったというか。『すっげー、この人』って思いましたね」と振り返った。

その妻夫木本人は次男。「僕自身は思いっきり俊平タイプです。根っからの次男坊。完全な甘えん坊です(笑)。今回は真逆の役どころだったからこそ、僕自身、やりがいがあったとも思います」と告白し、「僕は人に好かれたくてずっと生きてきた(笑)のに、壮亮はすごいんですよ。本当に自分に正直に生きている。ホント適わない。生き方ってお芝居にも出るんですよね」と池松を称賛。

すると池松も「僕は色っぽいという言葉を信じていないし、だから何? と思ってしまうんですが、今回のツマさんは、あー、色っぽいなと思いましたよ」と褒め合戦を応酬していた。

『ぼくたちの家族』
5月24日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

取材・文・写真:望月ふみ