1966年のブロードウェイ初演以来、世界各国で繰り返し上演されているミュージカル『I DO! I DO!』。2014年に霧矢大夢主演で上演され、第22回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞するなど、好評を得た作品だ。その名作が今春、夫役に鈴木壮麻を迎え、4年ぶりに再演される。4月下旬の某日、都内で行われている稽古場を訪問した。

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一歩足を踏み入れると、まず目につくのは大きなベッド。その上には、台本を前に考え込む霧矢と鈴木の姿が……どうやら、新婚初夜シーンのやりとりの細かいニュアンスに霧矢が悩んでいるようだ。1度試しに演じてみるが、どうもしっくりこないらしく「もうひと超えだな」と鈴木が言うと、「頭じゃわかってるの(笑)」と霧矢が返す。演出家の大河内直子も含め、再び思案する3人。そして霧矢の「ちょっとやってみていいですか?」の声でもう一度トライするものの、イメージと違ったのかすぐにストップ。「難しいね、カマトトぶる感じになってもいけないしね」と鈴木。再び皆でアイデアを出しあってゆく。再演といえども、登場人物はたったふたり。キャストが変わったことによる変化と、さらなるブラッシュアップ、そのための奮闘に取材しているこちらも思わず背筋が伸びる。

アグネスとマイケル、とある夫婦の50年間を音楽にのせて描いた本作をどう立ち上げていくか。稽古場では苦闘もあるが、基本的にはとても明るく、賑やかな雰囲気だ。霧矢も鈴木もお互いどんどん提案を出し、とにかくノンストップで稽古する。お互いにボケたり、つっこんでみせたりと息もピッタリ!? 霧矢が「こんな風に……」とマイケルを演じて見せ、そのあまりの男らしさに稽古場中が爆笑に包まれるひと幕も。

舞台上にはたったふたり、ほぼ出ずっぱり。演じる側にはかなりハードな作品だろうと思うが、霧矢と鈴木はとにかくアクティブだ。歌って踊って演技して、自分たちで小道具を出し入れしたり、時には家具を動かしたりとまさに八面六臂の活躍だ。本作で描かれる“夫婦・家庭間で起こるトラブル”エピソードをいかにリアルに見せていくか、稽古場で丁寧な作業を重ねてゆく。そんなほろ苦い部分も含め、極上のエンターテイメントとして楽しめるのは、ふたりの芸達者ぶりとチャーミングさがあればこそ! 

霧矢と鈴木の組み合わせは、テンポといい雰囲気といい、稽古を観ている時点ですでに“楽しい”。自身の人生と重ね合わせながらさまざまなことを思うだろう本作。さらなる進化を遂げた『ミュージカル「I DO! I DO!」』は、しみじみと心に残る作品になりそうだ。

公演は5月11日(金)から20日(日)まで東京・博品館劇場にて。チケット発売中。なお、チケットぴあでは当日引換券を5月9日(水)より発売開始。

取材・文:川口有紀