松田卓也博士によるトークの模様

映画『トランセンデンス』の試写会がテクノロジーやサイエンスについて扱う雑誌「WIRED」の読者を対象に16日に開催。宇宙物理学者の松田卓也博士が上映前のトークで映画で描かれる人工知能によって起こりうる未来の事態について語った。

その他の写真

ジョニー・デップ主演による本作は死の直前に妻によってその“意識”をスーパーコンピュータにインストールされた男の物語。主人公はそれにより、あらゆる情報にアクセス可能となり、生命さえ操る究極の進化を遂げていくが妻はそんな彼に恐怖を抱き始め…。

「超越」を意味する「トランセンデンス」は、人工知能がやがて生みの親である人類を超えてしまう事態を指す。40年以内にも実現すると言われており「2045年問題」はIT関係者などの間で一種の流行語となっているとのこと。松田博士は「知能爆発」という言葉でこれを説明し、現実に進行していることだと語る。

「20世紀の前半は、世界を支配する武器は戦艦だったが、戦後は飛行機、核になった。21世紀は人工知能やロボットが世界を支配する武器に相当する」と主張。こうした“サイバーウォー”の時代は既に到来していると明かし「例えば、こうした技術で(敵対する国の)水道や電気を破壊したらえらいことが起きます」と語る。

人工知能の開発を進めるということは、ある意味で「神を作るということと同じであるとも言われている」と語り、「それは(物理的に)新しい宇宙、すなわち世界を作ることにもなり、そこで生命を誕生させることもできるかもしれない」と想像を超える壮大な可能性を口にする。

アメリカや中国などの超大国が、国家レベルでこうした技術を手にすることは「人類が滅びる可能性もあるかもしれない」と問題点も指摘。一方で、企業が人工知能の開発に乗り出していることも紹介し「Google」がロボットや航空学、果ては火災報知機、ゲームの開発会社など他種におよぶ企業を買収していることに触れ「グーグルはいったい何をしようとしているのか?」と疑問を口にするなど、“トランセンデンス”が引き起こしかねない様々な未来について語り、観客はこうした仮説に興味津々に耳を傾けていた。

『トランセンデンス』
6月28日(土)公開