演劇集団キャラメルボックスの最新公演『無伴奏ソナタ』は、キャラメルの芝居を日本各地にお届けする「グリーティングシアター」。東京公演のあとツアーへと出発するメンバーを激励するため、5月17日の昼公演の終演後、イベント「出航式」が行われることに。

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すべての人間の職業が、幼児期のテストで決定される時代。音楽の才能を見出され「メイカー」となった青年・クリスチャンの生き様を描いたこの作品は、オースン・スコット・カードの同名小説の舞台化。2012年、2014年に引き続き3回目の上演となる。当日、平日マチネ公演にもかかわらず会場は満員御礼!静謐な雰囲気から一気に感情を上昇させられてゆくラストシーンの余韻をまだ残したまま、製作総指揮プロデューサー・加藤昌史の司会でイベントがスタートした。

まずは、脚本・演出をつとめた成井豊が挨拶。「大学時代に演劇をやっていたがその後挫折し、高校教師になった。“演劇をもう一生できないんだ”と思ってる時期にこの小説を読み、クリスチャンの人生に自分を重ねてしまった。57歳になった今、3度目の上演にもかかわらず稽古になるとやはり泣いてしまう。この物語には誰もの心を動かす普遍性があると思います」と語った。

続いて質疑応答コーナーに。架空の世界の物語ながら、今の時代にも通じるものがあるのでは? という質問には「稽古中、成井が“確実に現代は、初演のときよりも法律によって管理される割合は高まっている”ということを言っていて、まさしくそうだなと思います」と岡田達也がコメント。また、今回のツアーでは多数の高校生に向けた非公開公演も控えていることから、客演の文学座・石橋徹郎は「こういう時代に生まれた彼らがこの作品を観てどう思うだろう、というのは意識的になる」と答えた。

シリアスなコメントも出つつも、客席からの質問コーナーでは爆笑が何度も起こるにぎやかな雰囲気に!「劇中の楽器は生演奏?」という質問に「すごくたくさん練習はしました!」とドヤ顔で答えるクリスチャン役・多田直人に加藤Pが「コラ!」とツッコミ。ちなみに劇中に出てくる架空の楽器の音は、グラスに水を入れ並べた「グラスハープ」という楽器のものとのこと。また、限られた出演者で多くの登場人物を演じる作品のため、早替えの苦労話なども飛び出した。最後は出演者と客席で、作中に出てくる『シュガーの歌』を合唱し、出航式は終了。

初演から引き続きクリスチャン役をつとめる多田直人いわく、今回あらためて感じたのはこの作品が「お客様と一緒に作り上げていく作品」だということ。その理由はラストシーンを劇場で体感してもらえれば必ずわかるはずだ。ふだん劇場に足を運べない人こそ、このチャンスにその感動を味わおうではないか。

東京公演は好評のうちに幕を閉じたが、ツアーは始まったばかり。愛知公演は5月24日(木)・25日(金)に東海市芸術劇場、長野公演は6月2日(土)にまつもと市民芸術館、大阪公演は6月23日(土)・24日(日)にサンケイホールブリーゼにて上演。

取材・文:川口有紀