ニルス・タヴェルニエ監督

『エトワール』『オーロラ』のニルス・タヴェルニエ監督の最新作『グレート デイズ! -夢に挑んだ父と子-』が29日(金)から公開になる。車椅子生活を強いられている少年と父がトライアスロンに挑む姿を描いた感動作だが、監督は「あえて誇張するような演出をしないように心がけた」と語る。来日時に話を聞いた。

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本作の主人公ジュリアンと父のポールはそれぞれが心を閉ざしており、口をきこうとしない。そこで、ジュリアンは失業してふさぎこんだ父との関係を改善するためトライアスロンの最難関“アイアンマンレース”への出場をもちかけ、共に練習を開始する。興味深いのは、親子が“一体”になることなく、それぞれの想いや葛藤が丁寧に描きこまれていることだ。「最初からすべての登場人物が同じ方向を向いていて、映画の始まりと終わりで同じ状態であるならば、ロマンティックな映画はできません。この映画ではそれぞれのキャラクターが異なった個性をもっていて、それぞれが変化し、進化していきますし、個人のリズムも違います。男女でもトラブルが起こると理解の速度に差がありますよね? 私はそこが面白いと思っているので、登場人物ごとに違った感じ方や成長をしながら映画の最後でひとつのゴールにたどりつく、という物語を目指しました」。

本作は親と子がそれぞれに悩みを克服し、助け合い、過酷なレースを共に乗り切っていくドラマだが、無理に泣かせようとする展開や、おしつけがましい演出がなく、観る者がジュリアンとポールに“伴走”してレースに参加しているような気持ちにさせてくれる。「映画を撮る際には、そこで描かれる出来事を観客がまるで体感しているようなものにしたいと思っています。だから演出する際には、あえて誇張したりしないよう、観客が登場人物の横に並んで共に生きていると思えるよう心がけました。私はずっとドキュメンタリーを作ってきたので、そこで得たものが、演出に活かされていると思います」。

観客は車椅子に乗ったジュリアンと父ポールと共に泳ぎ、自転車をこぎ、長距離を走ってゴールを目指すことになるだろう。そしてラストには爽やかな気持ちになるはずだ。「この映画をつくる上で、私が何よりも重要視したのは“観客が幸福な気持ちになって映画館を出てもらえること”でした。主人公は障がいをもっていますが、そんなことを忘れてしまうような物語を作ることで、観た人に温かい気持ちになって前向きになってもらいたい。そこはどうしても言っておきたいことですね」

『グレート デイズ! -夢に挑んだ父と子-』
8月29日(金) TOHOシネマズ日本橋、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー