(左から)佐藤健、武井咲

寂寥感よりも早く多くの人に観てほしいという思い。惜別よりも、かけがえのないものとして残り続けるという確信。『るろうに剣心 伝説の最期編』公開に際し佐藤健と武井咲から伝わってきたのは、積み重ねてきたものへの揺るぎない自信だった。

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幕末に“人斬り抜刀斎”と怖れられ、明治維新後は“不殺(ころさず)”を胸に生きてきた緋村剣心の新たな戦いを描く本作。

佐藤が、剣心として臨んだ最後の撮影は、2部作の前編『京都大火編』のクライマックス、海上で志々雄(藤原竜也)と対峙するシーン。激しい雨で「びしょ濡れのまま終了し、そのまま花束を受け取って挨拶した(苦笑)」そうだが、胸に去来したのは何より安堵の思いだった。第1作よりも質・量ともに大幅にアップしたアクションに「大げさではなく本当に、最後まで撮りきることが出来ないかもしれないと思っていたので、無事終えられたのが本当に奇跡…。『終わった…!』という実感がありまくりでした」。

武井も同じ海上シーンで「海から落とされて終わった(笑)」が、頭の中を占めていたのは、自分のことより「佐藤さんも同じ日にアップを迎えるということだった」というところが長く薫を演じてきた彼女らしい。今回、戦いが中心で決して2人が一緒のシーンは多くはなかったが、2人の心の繋がりが大きな鍵を握る。「薫ちゃんも薙刀を手に戦いますが、監督から『必死に戦えば戦うほど、2人の距離が離れていてもそれはラブシーンになる』と言われてハッとしました」と武井が言えば、佐藤もまた「僕自身、戦いのシーンでは常に薫のことが頭にあったし、それは剣心のセリフにして残してもいいんじゃないかと思うくらい強かった」と振り返る。

そしてもうひとつ、期待が高まるのが佐藤と剣心の師・比古清十郎を演じた福山雅治とのシーン。『龍馬伝』に続き同じ大友啓史監督の下での再共演となったが「ずっと剣心を演じてきたのに、初めて感じる新鮮な気持ちになった」と明かす。「剣心が師匠にしか見せない顔、言わない言葉があり、2人で語るシーンは大好きなシーンになりました。『伝説の最期編』は原作にない部分も多いけど、福山さんとのシーンは台本を見る必要もなく『ここはこれを言いたい』という思いのまま自然に原作にないセリフが出てきましたね」。
「これが最後のつもりでやり残すことがないようにという気持ちで臨んだ」という佐藤。今もその気持ちに変わりはない。武井も「薫ちゃんたちと“離れる”という感じは全然ないです。ずっと生き続けていくので」と微笑む。おそらく観る人の心の中にも。「それが全てですね」と武井は力強くうなずいた。


『るろうに剣心 伝説の最期編』
公開中

取材・文・写真:黒豆直樹