「火のようにさみしい姉がいて」 撮影:谷古宇正彦

大竹しのぶ、宮沢りえ、そして段田安則主演の舞台『火のようにさみしい姉がいて』が10月5日より大阪・シアターBRAVA!で上演中だ。

『火のようにさみしい姉がいて』チケット情報

終始張り詰める緊張感、その中でふっと訪れるユーモア、美しい言葉の数々、そして鏡を多用して重層的な世界を作り上げた演出の妙が観客をうならせ、さきの東京公演は連日、好評を博した。段田安則は、妻と“姉”を前にして、夢と現の境界線上でゆらめきながら、記憶を翻弄される男を怪演する。

「清水さんの戯曲は、現実と虚構、真実と嘘、正気と狂気といった境界線を行ったり来たりするところが面白い。独特の台詞まわしで、しゃべっていて心地よく、楽しいです」と清水脚本の魅力を語る。

人生に疲れ果て、「転地療養」と称して20年ぶりに雪国の故郷に戻ってきた俳優(段田)と、その妻(宮沢)。道を尋ねるために入った理髪店の女主人(大竹)は、いつしか男の姉だと言い張るが、男にはその記憶はない。やがて男の“弟”と称する人物や、謎の老女3人が現れて、男の過去に踏み込んでいく…。緊張と緩和、現実と虚構が絶妙なタイミングで押し寄せる名作舞台をぜひ、体感してほしい。

そして、本作品を観る者によって結末が異なるサスペンスとたとえる。「誰の視点で見るかによって、その結末も形が変わって見えてくるかもしれません。姉、妻、男とそれぞれの視点で、捉え方が変わるのだと思います。正解を探そうと思えば思うほど、迷宮に迷い込むような感覚になるのでは」。

1978年に劇作家・清水邦夫が、自身が主宰する演劇企画集団「木冬社」で初演し、1996年には清水自ら演出を手がけ再演した舞台で、記憶の迷宮をスリリングに描き、大きな話題を呼んだ。だが、以降は一度も上演されることなく、いつしか人々の間では「伝説的な戯曲」に。そんな“幻の舞台”を蜷川幸雄が2014年、初めて演出を手がけた。

「鏡がいっぱいある楽屋のシーンで始まり、後半には遊園地にあるようなミラーハウスも出てきます。鏡に映っているものは左右反対の言わば虚の姿。そこにも現実と嘘と、夢とか真実という意味合いがある。普段、目に見えるもの、自分で理解できるものこそ真実と考えがちですが、本当にそこに真実はあるのか、狂気や嘘の中にも真実があるのかもしれない…と思えてくるような舞台です」

舞台『火のようにさみしい姉がいて』は10月13日(月・祝)まで、大阪・シアターBRAVA!で上演。チケット発売中。