年内にアナログとデジタルを融合した実験店舗のオープンを発表したドン・キホーテ。その方向性はECからリアル店舗に進出してきたAmazonやアリババとは異なっている

29期連続の増収増益を達成、売上高は1兆円に迫るなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進するドン・キホーテ(ドンキ)。かねてからスマートフォン(スマホ)をリアル店舗で活用する近未来型店舗の開発計画を掲げていたが、その構想がいよいよ現実のものになりそうだ。 8月20日に開催された決算説明会で、大原孝治社長は「デジタルとアナログが融合したスーパーハイブリッド店舗を年内にオープンさせる」とコメント。具体的な情報を明かしていなかったが、場所は関東圏を予定しているという。

昨年12月にBCNの取材では、「インターネットとリアルには、もはや境界はない。われわれは現実とスマートフォンを行ったり来たりしている。そのシームレス化するライフスタイルを考えれば、理想はスマホを所有していることを前提にした店舗」と、大原社長は構想の趣旨を語っていた。

これは、Amazonや中国EC最大手のアリババグループが展開するリアル店舗にも通じるものだが、異なるのは「EC発の合理性」ではなく「リアル店舗発の非合理と融合する合理性」を追求するということだ。相反するように思えるが、説明会当日に披露されたデジタル戦略のイメージ映像からは、ドンキが目指すデジアナ融合の姿を垣間見ることができた。

自宅で最寄り店舗の在庫を確認、入店時に顔認証で個人を紐づけるなど、ショッピングの効率化を目的とするソリューションもあるのだが、目立つのはショッピングの楽しさを追求するための仕かけだ。回遊中に店舗内で開催されるオークションに参加したり、店舗を歩いた歩数に応じたポイントを取得したりと、リアルの売り場で“非合理”を追求してきたドンキだからこその発想が新鮮だ。

「ドンキには“魔境”という社内用語がある。いかにお客様に楽しんでいただけるか。ライブ感やフェスティバル感を味わっていただけるようなアナログの極致ともいえる買い場をつくりこんできた。魔境というアナログはお客様が期待する“ウォンツ”、スマホ対応を中心としたデジタルは時代の求める“ニーズ”。両者をトレードオフすることなく、両立することでドンキはより居心地のよい店舗に進化することができる」(大原社長)という。

大原社長は小売各社の共通の脅威ともいえるAmazonを“合理性の極致”と評するが、以前から競合という見方はしてこなかった。「音楽でいうならAmazonはストリーミング配信やダウンロード、ドンキはライブやコンサート。どれだけ音楽を聴くための利便性が高まっても、臨場感のあるリアルの場の存在意義は変わらない」。新たな実験店舗は逆風の時代に小売がいかに生き残っていくのかを提示する取り組みにもなりそうだ。(BCN・大蔵 大輔)

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます