(画像左から)中村橋之助、南果歩 撮影:源賀津己 (画像左から)中村橋之助、南果歩 撮影:源賀津己

ギリシャ悲劇の傑作『オイディプス王』が、この冬、『オイディプスREXXX』(オイディプスレックス)のタイトルで新たに立ち上がる。タイトルロールのオイディプスを演じるのは、歌舞伎俳優・四代目中村橋之助。オイディプスの妻であり実は母でもあったというイオカステには南果歩が扮する。歌舞伎以外の演劇に初挑戦する橋之助と、実力派の南のタッグ。何が待ち受けるのだろうか。

2016年の親子同時襲名が話題となった橋之助。「父(中村芝翫)に守られてお芝居ができるという恵まれた環境にいるなかで、自分で勉強できる場所にも立ってみたいという思い強くなっていた」ところに今回の話があったという。その念願が叶ったのが、古典という枠組みでは歌舞伎と近しいギリシャ劇である。しかし、ことはそう単純ではない。これまでにない試みが、そこには待っているのだ。

ひとつは、演出が杉原邦生であること。自身の劇団のみならず、歌舞伎を独自の視点で描く木ノ下歌舞伎でも注目される気鋭の演出家だ。南果歩が言う。「今年上演された『勧進帳』を拝見しましたが、本当に驚きました。作品の解釈の仕方、ビートの刻み方、あらゆるものが新鮮で。ギリシャ劇というと重いイメージがあると思いますが、人間の感情が放出される生き生きとしたものになるんじゃないかと思うんです」。橋之助から見ても、杉原は刺激的な存在であるようだ。「これまで何百回と見てきた『勧進帳』なのに、見過ごしてきたものを気づかされたような感覚がありました。そういう意味では、『オイディプス王』も、古典をただ新しく変えるだけではない何かがあるんじゃないかと楽しみなんです」。

さらに、古代ギリシャ悲劇の上演スタイルにならい、今回は、橋之助、南、そしてもうひとりのメインキャストの宮崎吐夢の3人で、物語の主な登場人物を演じ分けることになる。タイトルの“XXX”には3人のキャストと劇中に象徴的に登場する3つの道を表している。「歌舞伎では同じ作品でも違う役を演じる機会があり、この役から見たらこの役はこう見えるんだなと気づくことがよくあります。今回はお客様にもそんな役の見え方の違いみたいなものを感じてもらえるように演じられたら」と橋之助。南も「舞台は性別も時間もすべて飛び越えられる自由な場所。その楽しさをぜひ味わっていただきたいですね」と付け加える。オイディプスとイオカステがなぜ悲劇的な運命を辿ることになったのか。新たな演出で真に迫る物語が紡がれそうである。

公演は12月12日(水)から24日(月)まで、KAAT神奈川芸術劇場にて。

取材・文:大内弓子

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