舞台『オレノカタワレ』より PHOTO by Kazunori ITO 舞台『オレノカタワレ』より PHOTO by Kazunori ITO

演劇界で近年めきめきと観客動員数を増やしている30-DELUXと、大衆演劇の雄・劇団朱雀。この2劇団がタッグを組んだ舞台『オレノカタワレ~早天の章~』が、昨年末の東京公演を経て、まもなく大阪・愛知で上演される。東京公演は全日完売、連日当日券を求めるファンが長蛇の列を作った。その公演レポートをお届けする。

『オレノカタワレ』チケット情報

作品は、大衆演劇の一座「劇団時座」を舞台に、座長の息子として将来を期待された青年・時枝三四郎と、問題児ながらピカイチの才能を持つ青年・風祭ジョー、ふたりの若者の運命の邂逅を描いた物語。2006年に30-DELUXが上演し評判となった舞台をベースにリメイク、劇団朱雀というホンモノの大衆演劇の劇団との融合で、奥深さのある舞台になった。

主演の三四郎とジョーをWキャストで交互に演じているのは、30-DELUXからは天野博一、劇団朱雀からは早乙女友貴という若手ふたり。観劇したのは三四郎=天野、ジョー=友貴の『天』バージョン。泥臭いほどに熱く、ドラマチックな物語を得意とする30-DELUXだが、そのパッションは若さと相性がいい。自分に自信が持てず苦悩と葛藤を内に抱える三四郎、そんな三四郎の力を誰よりも認めつつ突き放すジョーにそれぞれ全身全霊でぶつかっている天野、友貴の姿は、荒削りさはあるものの強く胸に迫る。ふたりの熱演は三四郎とジョーの複雑な愛憎を悲しく浮かびあがらせた。熱に浮かされたように観て、終演後は切ない儚さが心に残る不思議な作品となった。

アドリブ度の高い劇中劇もお楽しみのひとつで、中でもスペシャルゲストとして出演している早乙女太一の七変化ぶりは必見。太一自身も遊び心たっぷりに様々なシーンで“仕掛け”を仕組んでいるようで、客席のみならず共演者たちも思わず素で笑ってしまうような場面も。さらに30-DELUXの清水順二、劇団朱雀の葵陽之介らベテラン陣が締めるところは締め、笑わせるところは笑わせ、若きふたりの主役を大いに盛り上げた。

東京公演初日前に行われた囲み取材で「タイトルどおり(三四郎とジョーが)お互い影響しあって成長していく物語。その本筋を軸に、殺陣もふんだんに盛り込んでいますので、絶対面白い作品になっています」(天野)、「お客さんのパワーをもらいながら、僕たちもそのパワーに負けないように、全力で頑張っていきたい」(友貴)とそれぞれアピールをした主役のふたり。今の彼らだからこそ生まれた熱いステージをぜひその目で観て、感じてほしい。

上演は三四郎=友貴、ジョー=天野の『早』バージョンと回替わり。1月22日(木)から25日(日)まで大阪・ABCホール、1月31日(土)・2月1日(日)に愛知・名鉄ホールで上演される。