ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』 ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』

鹿賀丈史と市村正親がゲイ夫婦役に扮する『ラ・カージュ・オ・フォール』が2月6日に東京・日生劇場で開幕する。1983年にブロードウェイで開幕し、トニー賞6部門を受賞した傑作ミュージカル。日本では1985年よりコンスタントに上演を重ね、今年で日本初演30周年を迎える。初日を目前に控えた5日、最終舞台稽古が公開された。

ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』チケット情報

舞台は南仏サントロぺ。ゲイクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」のオーナーのジョルジュと、看板スターの“ザザ”ことアルバンのカップルは20年連れ添い、ちょっと倦怠期気味。そんな彼らには愛するひとり息子ジャン・ミッシェルがいる。彼はジョルジュが“たった一夜のあやまち”で出来た実の息子であり、アルバンが母親代わりになって育ててきた。そんな息子が、風紀に厳しい保守的な議員の娘と結婚したいと言い出し、ついては両家の顔合わせの場にはマトモな家庭であるように見せるために実の母親を呼びたいと言い出して…。

同性愛者ならではのままならなさ、悲しみもある。それでも「ありのまま、言い訳などするものか」と胸を張る彼らの潔さは気高い。市村や鹿賀といった経験値の高い俳優たちだからこそ、その姿勢にいっそうの説得力が生まれる。そんなジョルジュとアルバンのお互いを思う愛を筆頭に、息子に注ぐ愛、ジャン・ミッシェルと婚約者アンヌの愛……。様々な形の愛情に溢れた物語だ。そして、そんなシリアスなテーマを柔らかく包むユーモアも絶品で、特にジャン・ミッシェルのためにアルバンが“男らしい仕草”を特訓するシーンなど、市村や鹿賀のキュートな魅力が全開で、公開稽古という場にも関わらず、客席からは大きな笑いが沸き起こっていた。

さらにゲイクラブの踊り子に扮した12人の男性たちが麗しくも力強く踊るショーシーンは、そこだけを切り取っても見応えたっぷり。日本初演から踊り子を演じている真島茂樹、ダンスのみならず美しい歌声も響かせる新納慎也らがキワモノ感満載で楽しいステージを展開する。奥深いテーマと笑いのバランスの絶妙さも、長く愛されている理由のひとつだろう。

公演に先立ち、主演のふたりがコメントを発表。「今回で3回目の出演になりますが、今まで以上に面白さと感動が深まっていると思います。30周年という記念すべき公演に参加できて、感慨深い気持ちでいっぱいです」と鹿賀。また市村は「昨年、胃がんの手術をして、こうやって復帰できた喜びに感謝しております。『今』というこの時を、『ラ・カージュ』のテーマソングと同じように、しっかりと『生きて愛して』いきたいと思います」と劇中歌を引用しつつ感謝の言葉を述べた。劇団四季時代から盟友として数々の舞台に共演するとともに、日本ミュージカル界の名だたる作品群に主演してきた鹿賀と市村は、『ラ・カージュ』史上最高のコンビとして名高い。今年もいっそう愛のふかまったキュートなカップルが紡ぐ愛の物語、きっと観る者の胸に優しい温かさを届けてくれるに違いない。

公演は2月6日(金)から東京・日生劇場、3月6日(金)から大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。チケット発売中。