中村雁治郎(写真中央)、中村梅玉(右)、市川中車(左) 中村雁治郎(写真中央)、中村梅玉(右)、市川中車(左)

歌舞伎役者が、ご当地到着を船に乗ってお披露目する「船乗り込み」が5月29日に福岡市の中心部を流れる博多川で開催された。今年も晴天にめぐまれ、集まった見物客は約3万人。色とりどりの幟をはためかせながら小舟がゆるやかに進みだすと、橋の上や沿道から紙吹雪がまかれ、大きな歓声が沸いた。初夏の風物詩としてすっかりお馴染みの光景を経て、6月2日より『六月博多座大歌舞伎』が開幕。今回、襲名披露となる四代目中村鴈治郎が、共演の中村梅玉、市川中車と共に意気込みを語った。

六月博多座大歌舞伎 チケット情報

福岡へは、博多座ができる前から何度も来ることがあったという中村鴈治郎は「九州の方々には子供の頃からお世話になっており、友人も多く、縁の深い場所だと思っています。なりたかった鴈治郎として博多に帰ってくることができて嬉しく思います」と笑顔。上方歌舞伎を代表する名跡と演目について「雁治郎といえば二代目の祖父を思い浮かべる方が多く、やはり私の中でも、祖父に憧れ、追いかけてるところがありますね。役者が自分の言葉で話す口上は襲名披露公演ならではのもの。また初代鴈治郎の半生を描いた『芸道一代男』や息子(中村壱太郎)と舞う『連獅子』、父(坂田藤十郎)が当たり役お初を一世一代で務める『曽根崎心中』のアンコール公演にも注目してほしいです」と見所を語った。

「『曽根崎心中』の藤十郎さんのお初は素晴らしいので、出演が楽しみ」と語るのは、中村梅玉。今年の1月にスタートした中村鴈治郎襲名披露公演には全て出演し、博多座への出演も6年連続となる。「おそらく歌舞伎役者の中で一番多く博多座に出演させていただいていると思います。今回の『播州皿屋敷』では自分の性格にはない、全くの敵役です。“なんて悪いやつだ”と感じてくださるのが、演じていて楽しい」と初役を分かりやすくアピールした。

2年前、自身の襲名披露で博多座にも登場した市川中車は「雁治郎さんの襲名披露公演に出させて頂くことに改めてお礼を伝えたい。他の方の口上は初めてで、そこが一番緊張しますね、僕の中ではある意味、最大の演目かもしれません(笑)」と語り、「『ぢいさんばあさん』の夫婦の再会の場面では、(自分の)父と母の45年ぶりの再会を思い出します。私だけが演じることのできる気持ちのようなものがあると思って頑張ります」と思いを伝えた。

「六月博多座大歌舞伎」は6月26日(金)まで博多座で開催。チケットは発売中。