表彰式の模様

世界の新鋭監督が顔を揃えた“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015”が26日に閉幕し、同日に各部門の受賞作が発表された。注目の長編コンペティション部門は、キューバのエルネスト・ダラナス・セラーノ監督が手がけた『ビヘイビア』がグランプリに輝いた。

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今後の活躍が期待される監督たちの作品がしのぎを削った長編コンペティションで最高賞を受賞した『ビヘイビア』は、薬物中毒の母親を抱える過酷な環境下を生き抜く少年と、彼を見守り続けるベテラン女教師の交流を主軸とした人間ドラマ。残念ながら会場には不在だったセラーノ監督はコメントを寄せ、「私はこの映画で描かれているような環境で育ちました。また、ここに登場する子供たちの多くは映画で描かれた通りの人生を送っています。演技経験のない中で頑張ってくれた彼らの存在なくしてこの作品は成立しなかった。彼らに感謝したい」と喜びを語った。この作品について審査委員長を務めた堀越謙三氏は「今回の審査員4名全員が最高点をつけていて議論をする必要さえなかった」と審査員全員の意見が一致したことを明言。「かつて小津安二郎監督が“人間は品行は悪くてもいいが、品性が悪くてはいけない”と言った言葉を残している。その言葉を思い出す内容だった」と作品を絶賛した。

また、堀越氏は総評で海外作品がいずれも高いクオリティであったのに対し、日本映画は厳しいクオリティであったことを指摘。「この映画祭に限らずに言えることだが、いまの若い日本の作り手は非常に個人的なテーマが多く、内容がドメスティック。そういった作品が海外で評価させることは難しい。フィクションの物語をきちんと描いて観客を納得させられる、そんな作品を作ることを若い監督たちには目指してほしい」と日本人監督たちの奮起に期待した。

また、監督賞はメキシコのホルヘ・ペレス・ソラーノが手がけた『絶え間ない悲しみ』が受賞。結果として中南米の作品が大きな存在感を発揮する本開催となった。なお、各賞は以下の通り。

●長編部門(国際コンペティション)
最優秀作品賞:『ビヘイビア』(エルネスト・ダラナス・セラーノ監督)
監督賞:『絶え間ない悲しみ』(ホルヘ・ペレス・ソラーノ監督)
脚本賞:『君だってかわいくないよ』(マーク・ヌーナン監督)
SKIPシティアワード:『あした生きるという旅』(内田英恵監督)

●短編部門(国内コンペティション)
最優秀作品賞:『わたしはアーティスト』(藪下雷太監督)
奨励賞:『オンディーヌの呪い』(甲斐さやか監督)/『空っぽの渦』(湯浅典子監督)

  ●アニメーション部門(国内コンペティション)
最優秀作品賞:『夢かもしれない話』(朴美玲監督)
奨励賞:『女生徒』(塚原重義監督)/『息ができない』(木畠彩矢香監督)
審査員特別賞:『幕』(水尻自子監督)

取材・文・写真:水上賢治