大野拓朗 撮影:田中秀典 大野拓朗 撮影:田中秀典

近年の日本ミュージカル界で最大のヒット作と言っても過言ではないだろう、ミュージカル『エリザベート』。19世紀オーストリアに生きた皇后の激動の半生を綴った作品だが、そのヒロイン・エリザベートの息子にあたる皇太子ルドルフも、その孤高さとドラマチックな生き様で日本人が愛してやまないキャラクターだ。ウィーン初演から20周年という節目の年である今年、そのルドルフ役が一新。3名の若手俳優が新たにこの役に挑む。そのひとり、大野拓朗はこれがミュージカルデビュー。現在公開中の映画『ライアーゲーム-再生-』をはじめ、映画にドラマにと主に映像の世界で活躍している彼だが、「ミュージカル、大好きなんです! 劇場に行くと頬がほころんで、ずっとニコニコしながら観ちゃう。今回オーディションに受かって、光栄です」と初ミュージカル出演へ期待の瞳を輝かせる。

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もちろん『エリザベート』も大好きだ。「もともと、小池(修一郎)先生の演出作品が好きなんです。映像だとナチュラルな演技の方がいいって言われますが、ミュージカルは徹底的に作られた空間。その異空間な感じが好き。特に『エリザベート』は音楽もカッコいいし、登場人物すべての生き様に惹かれました。それぞれが主演になれるくらいのエピソード、ドラマを持っていて面白かったですし、その世界に引き込まれる空気があります」。だが、自分とは縁遠いものと思っていたという。「ミュージカル、いいなぁ。『エリザベート』、いいなぁ! って純粋に観ていました。歌もやったことなかったですし、自分がミュージカルに出れるなんて思ってもみなかった。だから本当に出演できることが嬉しい」。

演じるルドルフは、皇太子に生まれながらも国の行く末を憂い父に背き、革命運動に身を投じ、最終的には自ら命を絶つ。一言で言えば“悲劇の王子”だ。自分との共通点を問うと、「すべてですね!(笑)」と茶目っ気ある答えが返ってきた。「…いえ、先日まで借金の取立て屋の役をやっていて(舞台『レシピエント』)、それが本当に大変だったんです。自分の中にそういう“悪い部分”や“カッコつける部分”がないんだなって。だからルドルフのピュアさや、何かに対して一生懸命だったりする部分の方が自分には近いのかなって」。

取材のあいだ中何度も「楽しみ」という言葉を口にし、この作品へ参加できる喜びと期待がはたからも見て取れる、全開の笑顔を見せてくれた大野。「基本的にポジティブなんです、僕。もちろん、ぜんぜん自分はまわりに追いついていないというのはわかってるんですが、本番までに絶対追いつくって思っていますし、練習も嫌いじゃない。追い込まれて自分が成長するのも楽しみなんです」。思い描くのは「より純粋な、守ってあげたくなるようなルドルフ」。そう語る人懐っこい笑顔に、大野の目指すルドルフが透けて見える気がした。

公演は、5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。チケットは発売中。その後7月に福岡・博多座、8月に愛知・中日劇場、9月に大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演される。