平方元基 撮影:田中秀典 平方元基 撮影:田中秀典

今まで数多のスターを生んでいることから“ミュージカル・スターの登竜門”と言われる役がある。『エリザベート』のルドルフ役がそれだ。今年、新たにルドルフに挑む平方元基はしかし、ひと足先に“ミュージカルの新星”と呼ぶにふさわしい登場の仕方でミュージカル界に現れた。昨年の『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役だ。初ミュージカル出演だったが、華やかな舞台姿で大ナンバーをこなし、観客に大きなインパクトを与えた。「すごく素敵な経験でした。でも今度は、何だかわからないけれど一生懸命、では許されないし、次のステップに進んでると自分でも確信したい」。そう語る瞳には、2作目の出演ならではの明確な課題が映っている。

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『エリザベート』はハプスブルク家の最後の皇后の生涯を綴った大ヒットミュージカル。平方が演じるルドルフは、主人公エリザベートの息子だ。「皇太子ですので、品のよさや出で立ちが、ティボルトとはまた違う。立ち居振る舞いは普段の生活が出ると思うので、気にかけるようにしています。それにきちんとミュージカルとして、歌詞をセリフとして伝える歌い方をしたい。前回に比べて少しでも、音の厚みとか雰囲気を感じ取ってちゃんと歌える役者でありたいんです」。まだ本格的な稽古が始る前だというが、次々と自らへの課題を口にする。入念な準備をするタイプなのかと訊いたところ、しかし「稽古前に固めてしまうことはしたくない」という返事。「最初から“こうしてきました!”というのは、それしか持てなくなりそうで。でも色んなものを読んだりして、選べる用意はしておきたい。何か言われたときにパッと取れるように」。

そんな平方は、オーディションで演出の小池修一郎に「お前の思い描くルドルフは何色だ」と訊かれ、反射的に「紫」と答えたそうだ。「その時は何でそう言ったかわからなかったけれど……。まずは(メインビジュアルでもある)水色の軍服を着ている印象が強くて。でもその爽やかな水色すらも、彼の心のうちや死ぬまでの人生にある“闇”とあいまって、紫に見えたんだと思います」とルドルフの孤独に思いを馳せる。とはいえ、「一般的に儚いイメージがありますが、ただただ切ない、愛くるしいルドルフにはしたくない。志高く、皇太子として国を守りたいという強さから始まり、色んなものの影響を受けて、最後は自分を死へと追いやってしまった。ちゃんと道筋を描いて壊れていきたい」。きちんと一生を生きたいんです、と力を込めて話す。

『ロミオ&ジュリエット』、『エリザベート』と、今や日本ミュージカル界の中心人物、小池演出作品へ2作連続出演となった平方。それを幸運だったと話すが、ファンならずとも今後のミュージカル界での活躍を期待せずにはいられない。ミュージカル・スターへの道を目指しますか、と訊いたら「…なっちゃって、いいですか!(笑)」。最後に爽やかな笑顔を見せてくれた。

公演は5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。その後福岡、愛知、大阪でも上演される。なお、ルドルフ役は平方のほか、大野拓朗、古川雄大のトリプルキャスト。