『水平線の歩き方』  photo:伊東和則 『水平線の歩き方』 photo:伊東和則

キャラメルボックス2015ハーフタイムシアターが10月8日、東京グローブ座にて開幕した。上演時間60分の短篇演劇を2本立てにした当企画。今回は、2008年にキャラメルボックスの成井豊が書き下ろし、3度目の上演となる人気作『水平線の歩き方』と、キャラメルボックスと15年来の付き合いがあり、劇団「空晴(からっぱれ)」の代表を務める岡部尚子による書き下ろし新作『君をおくる』というラインナップになった。

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『水平線の歩き方』の主演は劇団の中心的俳優である岡田達也と岡田さつき。初演から一貫して同じ役を担い、作品の完成度を磨き上げてきたふたりのやりとりは、抜群の安定感と躍動感を併せ持つ。とりわけ、著名なラグビー選手としての栄光と怪我による挫折を経験し、人生の盛衰に直面する「幸一」を演じた岡田達也は、その実直な演技で観客の心を激しく揺さぶり、多くの感涙を誘った。

新作『君をおくる』はキミエという女性の引越しにまつわる群像劇。前半はキャストが舞台上に登場する度に「ボタンのかけ違いによる勘違いの連鎖」がまき起こり、場内は大きな笑いに包まれる。後半は実川貴美子演じるキミエを中心に、各々が抱えるわだかまりと向き合おうとする姿を描き、観る者を勇気づけるキャラメルボックスらしい爽やかなラストシーンを迎えた。作品全体に流れる軽妙なリズムは、劇団員同士による息の合った創作のたまものだろう。

更にこの2本立ては『水平線の歩き方』に出演する俳優たちが再び登場し、「同じマンションの別の一室を用いて異なる物語を作る」というアイディアに基づいており、『水平線の歩き方』と『君をおくる』を連続して観劇することで、俳優たちの多彩な演技スタイルを立て続けに堪能することが出来る。劇団が誇る感動作と外部作家によるコメディタッチの人間ドラマは、それぞれ異なる印象と満足を抱かせつつも、大切な人を見送ることで、人と人との繋がりや絆の尊さを一層感じさせる作品に仕上がっていた。

2015ハーフタイムシアターは10月12日(月・祝)まで東京グローブ座、10月16日(金)から18日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。また「キャラメルボックスが普段の公演では行かない街へ作品を届けに行く」というコンセプトの2015グリーティングシアターでは『水平線の歩き方』5都市ツアーを敢行、10月20日(火)仙台、22日(木)山形、25日(日)岐阜、28日(水)愛知、10月31日(土)から11月1日(日)まで岡山にて上演。チケットはチケットぴあにて発売中。

取材・文:園田喬し