伊勢志摩名物といえば、伊勢エビ、的矢カキ、車エビなど、枚挙に暇がありません。
その中で今回はアワビを紹介します。
といっても残念ながら、高価な活きアワビを買える身分ではございません。
アワビの肝で作った「アバロンパテ」を説明させてください。
三重県伊勢市にある「若松屋」という蒲鉾メーカーが開発した製品で
伊勢志摩産のアワビ(アバロン)の肝に、
オリーブオイルやニンニク、塩、バーブを合わせて作ったソースだそうです。

 

海藻を食べて育ったアワビの肝は旨い。

この肝を料理に愛用している人はたくさんいます。
ところが、これまで伊勢志摩の旅館などではアワビの肝を捨てていたそうです。
ああ、もったいない。

「廃棄していたアワビの肝を、有効活用できないだろうか」
という発想で若松屋のご主人が、アワビの肝ソースを考案したと聞いています。
アワビの肝のおいしさは知っているけど、肝が欲しくて高価なアワビは買えない。
そんな私のような人には、アバロンパテをおすすめします。

じつはアバロンパテは「平翠軒」のご主人、森田昭一郎さんに教えてもらいました。
平翠軒は全国の旨いものを扱っている食料品店です。
岡山県倉敷市にある31坪の小さな店なのですが、全国の食の職人が作った
見たことも聞いたこともない旨いものをたくさん扱っています。
食べ物好きな人なら、1時間は出てこられないぐらい面白い店です。
岡山へ行く機会があれば、ぜひ倉敷に足を伸ばしてください。


さて。
森田さんにこのアバロンパテをどうやって食べたら旨いのか、訊ねました。
「いろいろな食べ方があるけど、俺はパスタでしか食べてほしくないね。
そのパスタにもいろいろなタイプがあるが、カッペリーニで食べてごらん」
カッペリーニは「髪の毛のように細い」という意味の、極細パスタで、
あっさりとしたソースにあいます。
茹で時間は約2分。(写真左がカッペリーニ。太さ0.9mm。右は1.6mm


パテに付いているレシピを見ると、茹でたパスタとパテをフライパンに入れ、
弱火にかけながら、からめるとあります。
このとき、お好みでバターか、オリーブオイルを入れるといいようです。

いまが旬のアサリとあわせてみました。
オリーブオイルでアサリを炒め、仕上げにパテを入れる。
これにアルデンテに茹でたカッペリーニを和えただけです。
アワビの肝の香りが堪えられない一品を味わえます。


森田さんはパスタ料理をすすめてくれましたが、パンとの相性も良さそうです。
バターをのせて、さっと焼いたバゲットにパテをぬってみました。
このパテは割とあっさりしているので、バターのコクが加わるとよりおいしくなります。


伊勢志摩の特産品はカキと書きました。
伊勢志摩産に限らなくてもカキとアバロンパテの組み合わせもいいはず。
カキをフライパンに入れ、少量のバターで軽くソテーします。
仕上げに少量のパテをフライパンに落とし、軽く炒めてみました。
バターの香りとアワビの肝の風味が絶品。
残ったソースをパンに付けたら、これがまた旨かった。
アワビとカキの肝、よく似ているからなのか、この取り合わせはばっちりです。
このカキを適当な大きさに切り、クラッカーやスライスしたバケットにのせ、
鍋に残ったソースをかければ、小洒落た前菜に変身します。
ワインも用意すれば、もっとおいしく食べられると思います。

今回紹介した若松屋のアバロン・パテ(40g入り/840円)は、
セブンネットショッピング平翠軒コーナーで購入できます。
パスタに使うのなら、ひと瓶でふたり分が目安のようです。
ちょっと高い気もしますが、外で食べることを考えると安いかも。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。