キャラメルボックス『BREATH』 撮影:伊東和則 キャラメルボックス『BREATH』 撮影:伊東和則

今年、創立30周年を迎えたキャラメルボックスのクリスマスツアーが11月19日、兵庫・新神戸オリエンタル劇場にて開幕した。今作『BREATH(ブレス)』は、脚本・演出の成井豊の新作で、劇中では、同じくデビュー30周年を迎えたTUBEが本作のために書き下ろした新曲『Love In White』をテーマソングとして使用、オープニングのダンスシーンでは、『クリスマスローズ』も使われている。

キャラメルボックス『BREATH』チケット情報

舞台は12月の東京。都内の劇場に勤める堀江恭子(岡内美喜子)に、高校時代の同級生・赤星一馬(多田直人)から突然電話がかかってくる。一馬は「明日のニュースを見てほしい」と伝え、翌日、恭子は一馬が小説家におくられる芥山賞を受賞したことを知る。高校の卒業式の日、「芥山賞を取ったら結婚してあげる」と言った恭子の言葉を信じ、一馬は連絡をしてきたのだ。その日から一馬は、恭子の劇場で上演されている芝居に毎日訪れるようになり…。

恭子と一馬をはじめとする7組の男女の物語がテンポ良く展開し、次第に交錯していく。また、その7つのエピソードを違和感なくスムーズに繋ぐ存在として、あるひとりの男・風呂木(菅野良一)が狂言回し的な立場で暗躍している。それぞれが主人公になり得る本作は、観客一人ひとりの世代や性別、立場によって捉え方も変わるはず。コミカルな演技で笑いを誘いつつ、締めるときは心をグッと鷲づかみに。さまざまな目線で見られることもあり、いろんなタイミングですすり泣きの音が響いてくる。そして、クライマックスで流れるTUBEの優しいラブソングが物語にナチュラルに溶け込み、クリスマスにぴったりの心温まる世界観に仕上がっている。いち早く、大音量で聴けるのもファンにはたまらないだろう。

ベテランの西川浩幸から今作で初舞台を踏んだ新人3人まで、15人全員の熱いエネルギーがステージにあふれる。思うようにはいかない人生。それでも前を見て進んでいけばきっといいことがあるはずと、作品を通して背中を押してくれるのだ。また今作では、30周年の最後を飾る作品だけに、これまで応援してきたファンをニンマリさせる仕掛けも随所に散りばめられている。舞台装置の転換でそれが現れたときには、「わぁ~!」という驚きの声も漏れていた。

そしてTUBEからは「今回のテーマソングを作るために舞台のプロットを読ませていただき、そのイメージをもとに楽曲を書き下ろしました。キャラメルボックスという劇団のまさしく“息吹”(BREATH)をそのまま詰め込んだラブソングが出来上がりました」という思いを綴ったコメントも到着。その『Love in White』が収録されたTUBEのニューシングル『灯台』は、12月16日(水)にリリースされる。

神戸公演は11月23日(月・祝)まで。その後、新潟、東京でも公演。

取材・文:黒石悦子