XR技術を使って複数のデザイナーが作品をつくる

クリエイター向けのペンタブレット製品メーカーのワコムの井出信孝社長兼CEOは6月12日、中国・上海で開催中の家電を中心としたエレクトロニクス製品の見本市「CES ASIA 2019」で基調講演を行った。VR(仮想現実)やMR(拡張現実)を融合したXR技術により、複数のクリエイターが同時にデザインできる事例紹介や、一般の文房具への進出、デジタルインク技術を使った将来の構想などについて語った。

まずはパートナー契約を結んだ英国・ロンドンに本社を置くgravity sketch社のXR技術を使って、離れた国や場所にいるデザイナー同士が、3DのHMDを装着してデザインする事例を紹介。実際に大手自動車メーカーが導入している技術だという。「2次元だとスケールアップが必要だが、3次元では1対1のスケールで描写することも可能だ」(井出社長)。

複数のデザイナーで描けるため、豊富なアイデアを反映できる上、完成までの時間も大幅に短縮できる。会場では、実際に離れた場所に住む5人のデザイナーが3Dのデザインにアクセスしながら3Dのキャラクターを制作している様子を動画で紹介した。

また、本会場のワコムブースでもデモを行った、開発中の「書けるスマホカバー」のコンセプトモデルを披露。スマホカバーを開いたところにある紙に書いた文字が、自分のスマートフォン(スマホ)画面にミラーリングで表示される。

デジタルインクを使うことで、アーカイブや共有はもちろん、修正や消去、消したものの復元など自在な操作が可能だ。

ワコムでは、クリエイターだけではなく、幅広い一般ユーザーにもワコムのテクノロジーを使ってもらおうと、最近では文具メーカーへのOEMソリューションに力を入れる。独・ステッドラー社や高級万年筆でおなじみのモンブラン社などとコラボして、ワコムのデジタルペン技術を応用した製品をつくっている。

井出社長は「アーティストだけでなく、普通の人たちが文房具を使って自分の考えを表現しているように、デジタル文房具で人々の生活をサポートしたい」とアピールした。

最後に開発中のテクノロジーも披露した。デジタルインクで書かれた筆跡や文章の前後の脈絡から、特定の個人やその人と関係する人々や組織などとのつながりなどが分かるという。

デモで発表されたのは「Heidi Wang」という人の名前の筆跡をマーキングすると、世界にたくさん存在する同名の中からある個人を特定できるという。

また、住所が記載されていれば地図情報やその周辺のレストランなどが関連して表示されるといったイメージだ。

ほかにも、イベントの名称をマーキングすると関連する人物や関係性、他の企業や組織との関係性なども表示される。

井出社長は、文字やテキスト、筆跡など二次元のありふれたデータからでも、デジタルインク技術やAIなどの最新テクノロジーを融合すれば、これまでとは違ったまったく新しい可能性が広がることを熱弁した。(BCN・細田 立圭志)

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