市川染五郎 市川染五郎

歌舞伎俳優の市川染五郎が東京・新橋演舞場『五月花形歌舞伎』で『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』の源為朝を初役で演じる。祖父・初代松本白鸚、父・松本幸四郎も演じた役に挑む染五郎が現在の心境を語った。

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1969年に初演された本作は、曲亭馬琴原作の伝奇物語をもとに三島由紀夫が書いた創作歌舞伎。三島は小説以外にも『地獄変』や『鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)』などの歌舞伎を創り、一連の作品は“三島歌舞伎”と呼ばれている。初演時は演出も三島が買って出るなど渾身の力を注ぎ、壮大な物語を幻想的でロマン溢れる歌舞伎に仕立て上げた。物語は忠誠を貫く英雄、源為朝の活躍を描いたもの。「上の巻」「中の巻」「下の巻」からなり、伊豆、四国、九州、琉球(現在の沖縄)と様々な地で繰り広げられるスケールの大きな芝居で、上演時間は休憩を入れて5時間近い。

染五郎は「祖父が三島さんと創り上げた作品で、細部にわたってこだわりがあります。SF的でどこか古怪な感じもします。三島さんを筆頭に、(創作した)一座の熱を感じますね。そういうものを全て再現できれば」と意欲を語る。脚本も初演時のものを変えずに上演するそうだ。「あえて変えないでと思っているのは、この作品に対する取り組み方のひとつのテーマだと思っています。もしも変えるのであれば、初演時と同じ苦労をすべきじゃないかと。練り上げたものを通らないと変えることは出来ないです」。見どころについては「スペクタクルというよりはパンクですかね。絵に描いたようなヒーローの活躍や、役者がどれだけ輝いているか」を楽しんでと話す。

今月は同じ新橋演舞場で『仮名手本忠臣蔵』の大役、大星由良之助役にも挑んでいる。「これが出来なきゃ意味が無い、高麗屋としてもとても大事な役です」。梨園の名家に生まれ、年齢とともに重責を担っていく立場になった今、歌舞伎俳優としての決意が垣間見えた。

今後やってみたいことについては意外な答え。「究極は自分が書いたものを人に演じてもらって、自分は客席で観たいです」。来年は40歳を迎える。「ちょうど新しい歌舞伎座が完成する年なので、ハッキリとした目標が定められます。今年一年、来年に照準を合わせて頑張ります」。

公演は新橋演舞場にて、5月1日(火)から25日(金)まで夜の部で上演する。チケットは発売中。