草刈民代 草刈民代 撮影:河上良

2009年にバレリーナを引退し、女優として活躍する草刈民代がミュージカル『グランドホテル』に出演する。役柄は、引退間際で踊ることに自信を失いつつあるバレエ界のスター。草刈に役への思いや、バレエ人生で得たことなどについて語ってもらった。

ミュージカル「グランドホテル」チケット情報

『グランドホテル』は、1920年代のベルリンの同名ホテルを舞台に、草刈演じるバレリーナのグルシンスカヤをはじめ、借金の取り立てから逃げる男爵ら、人生の分岐点に立った人々が交差する物語だ。かつて劇場を満杯にしていたグルシンスカヤは、今は客席を埋められず、踊りに対する情熱も薄れてきた。「踊るか踊らないかと悩むのは昔の私と重なり合う。踊れなくなったときの葛藤や揺れを受け止めるのは大変でした。そこは経験を生かしてリアルに演じたいですね」。彼女は絶望の淵にいるものの、伊礼彼方演じる男爵と恋に落ちる。「作品は、バレリーナをはじめとする芸術家の危うさを象徴的に描いている。挫折していても、恋することによってその挫折感を忘れる。彼女にとって恋することは大きくて、希望を見つけ新たな一歩を踏み出そうとするんです」

英国の若手演出家トム・サザーランドの手による今作は、出演者が「RED」と「GREEN」に分かれ、それぞれ異なった結末が描かれる。「今回は全く違うバージョンとなるようです。そこに、サザーランドさんの旺盛な想像力や発想力のエネルギーを感じました。私は「RED」チームですが、別のチームを気にせず、自分の役を深められますし、ふたつの作品を作ること自体にキャスト全員が刺激を受けているのではないでしょうか」。グルシンスカヤがどんな決断を下すかは見てのお楽しみだ。

草刈自身、引退後はバレエを踊ることはないそうだが、今回彼女の踊りに期待している観客も多いだろう。「久しぶりにトゥシューズを履きます。この物語はホテル内での出来事が展開していくので、バレエを踊るシーンはありませんが、舞台裏でのバレリーナの表情をリアルにお見せしたいと思っています」。

ミュージカルは今作で2回目の出演だ。「『こういう役やりませんか?』とオファーがあったら、何でもやります!と即答です(笑)。失敗したら、恥をかいたらどうしよう、とか考えない方かもしれません」。その心意気はバレリーナの経験がものをいっている。「踊っていたときに学んだのは後に引きずらないこと。海外のバレエ団との共演でそれを身に着けていったのかもしれません。主役を踊っている以上は、周りの人に中途半端な姿を見せることはできませんでしたから。かつて大バレリーナであった方々からも教えていただいた経験がありますが、皆さん腹の据わり方が半端ではなかったです。そこまでは及びませんが、何でも前向きにできれば一番だと思います」

公演は、4月9日(土)から24日(日)まで東京・赤坂ACTシアター、4月27日(水)・28日(木)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、5月5日(木・祝)から8日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。チケットは発売中。

取材・文:米満ゆうこ