撮影:三上富之 撮影:三上富之

宝塚歌劇月組公演『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』が、10月4日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。日本オーストリア友好150周年記念として贈る本作は、『エリザベート』や『モーツァルト!』など、日本でも人気の大ヒットミュージカルを生み出したウィーン劇場協会が2017年に現代のオーストリアを題材に制作した作品。オーストリア以外の国では初上演となる。

宝塚歌劇月組 日本オーストリア友好150周年記念 UCCミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』チケット情報

舞台はウィーンにある老舗の四つ星ホテル「ホテル・エードラー」。ホテルの御曹司ジョージ・エードラーとハリウッド女優エマ・カーターとの恋と葛藤を軸に、家族への愛、故郷への想いを描いたハートウォーミングな物語だ。映像を取り入れた演出で、幕開きからワクワクさせられる。楽曲には、オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒのヒット曲を使用。心弾むものからうっとりするものまで、耳なじみのいい、バラエティに富んだ楽曲の数々が物語を彩る。役者それぞれの個性はもちろん、組の一体感やパワーを感じるような、華やかで躍動感あふれるレビューシーンも満載だ。『エリザベート』を想起させるセリフがあったりと、ウィーンミュージカルならではの洒落っ気ある笑いでも楽しませてくれる。

トップスター・珠城りょうが演じるジョージは、伝統と格式を重んじる両親に対して、現代的な感覚を持つ跡取り。「今の時代に合わせて変えていくべき」と、ホテルはもちろん、ウィーンの街を思い行動する、芯のある人物だ。従業員のミスを大きな心でフォローする余裕を持ちながらも、美園さくら演じるエマへの思いに苦しくなったりと、おおらかさと真っ直ぐさを持ちあわせたキャラクターは、珠城のハマリ役。エマを演じる美園は、ハリウッド女優としての息苦しさと、故郷の空気に触れて心が解放されていく様を繊細に表現している。さらに、エマを利用して稼ごうとする豪腕なマネージャー・リチャード役の月城かなと、一見紳士的でありながらもダメッぷりが愛らしい父親ヴォルフガング役の鳳月杏、太陽のような明るさをもち、“マッチョ”ナンバーで楽しませてくれるアルゼンチン代表サッカー選手・パブロ役の暁千星など、それぞれに個性あふれるキャラクターを好演している。

故郷を思う気持ちにあふれた、家族に会いたくなるような、温かい気持ちになれるミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』は、11月11日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、11月29日(金)から12月28日(土)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは10月20日(日)一般発売。

取材・文:黒石悦子