宝塚歌劇星組『ダンサ セレナータ』 撮影:三上富之 宝塚歌劇星組『ダンサ セレナータ』 撮影:三上富之

前作『オーシャンズ11』での演技が認められ、菊田一夫演劇賞を受賞した宝塚歌劇星組の男役トップスター、柚希礼音(ゆずき れおん)。5月18日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた新作公演『ダンサ セレナータ』『Celebrity-セレブリティ-』は、柚希の魅力のひとつであるダイナミックなダンスがたっぷりと堪能できる作品に仕上がっている。

宝塚歌劇星組『ダンサ セレナータ』のチケット情報

『ダンサ セレナータ』は、クラブのトップダンサー・イサアクと植民地出身の娘モニカとの恋を軸に、軍事独裁政権下にある国の政治的背景を絡めた物語だ。舞台は朽ち果てたクラブに、柚希演じるイサアクが現れるところから始まる。ヒゲをつけた渋い佇まいのイサアクがかつてのクラブを回想すると、ステージの空気がガラリと変わって華やかに。柚希を中心とするカラフルな衣装を身にまとったダンサーたちの、華麗なショーが繰り広げられる。そうしたショーダンスのシーンと、政治が絡んだシリアスなシーンがバランスよく構成されている。少し強引で男らしく、それでいてどこか影を持つイサアク。納得がいくショーができずにいた中、夢咲(ゆめさき)ねね演じるモニカに出会ったことで、ダンスへの情熱を取り戻す。躍動感あふれるイサアクのダンス、特にモニカとのデュエットは息をのむ美しさだ。

本公演で退団する2番手男役、涼紫央(すずみ しお)は、クラブのバーテンダー・ジョゼ役。ダンサーたちを一歩引いて見ている、落ち着いた大人の男だ。登場するだけでホッと安心感を与えるような存在で、2番手として組を支えてきた涼そのもののよう。また、紅(くれない)ゆずる演じる秘密警察のホアキン、十輝(とき)いりす演じるモニカの兄・アンジェロが政治に深く絡む役柄で、ハードボイルドな正塚晴彦作品には欠かせない、シリアスな場面を担う。さらに、そんな緊張感のある雰囲気の中で、ひとりコミカルな演技でほどよく緩みを与えるルイス役、真風涼帆(まかぜ すずほ)も好演を見せている。

第2部のショー『Celebrity-セレブリティ-』は、開幕直前から幕を使ってシャレた演出で楽しませる。そして幕が開いたかと思えば、オープニングからエンディングまで突っ走るような勢いで展開。ヘリコプターから降り立ったセレブ、スーパーモデルとファッションデザイナーのカップル、映画のヒーロー、宝石……と、さまざまな“セレブリティ”をイメージしたシーンが続く。都会的で斬新な演出にグイグイと引き込まれていく観客。第1部のシリアスな世界観から一転、ダンス巧者の柚希を中心に、星組のイキイキとした力みなぎるステージだ。

兵庫・宝塚大劇場公演は6月18日(月)まで上演。その後、7月6日(金) ~ 8月5日(日)まで、東京宝塚大劇場にて上演。こちらのチケットの一般発売は6月3日(日)より。チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を、S席は5月28日(月)11時まで、A・B席は5月29日(火)11時まで受付中。

取材・文:黒石悦子