『幸せへのキセキ』原作者のベンジャミン・ミー

『あの頃ペニー・レインと』の名匠キャメロン・クロウ監督がマット・デイモンと初コンビを組んだ『幸せへのキセキ』が6月8日(金)に公開。ガンで妻を亡くしてしまった平凡な男と子供たちが、「動物園を買って再建する!」という無謀なチャレンジを通して再生していくヒューマンドラマだが、これは実際に起きたストーリー。まったくの素人から突然動物園オーナーになった原作者、ベンジャミン・ミーが実体験と映画について語った。

その他の写真

もともとは新聞に日曜大工のコラムを寄稿するフリーライターだったミーは、「動物園を買うなんて、狂気の沙汰だと思った」と笑う。「ところが閉園中だった動物園を見に行って、250匹もいる動物たちに恋をしてしまったんだ。それに買い手がつかなければ、ほとんどの動物が処分されると決まっていた。そのときに、こう考えたんだ。僕にはアフリカで起きている悲劇を止めることはできないが、目の前の動物たちを救うことはできるんじゃないかって」

地元イギリスのテレビ番組で紹介されたり、ミー自身が体験記を出版したりしたことで、彼の一家はたちまち有名になり、ハリウッドから映画化話が舞い込むようになった。「大金をオファーされて舞い上がったよ! でも土壇場でこう言ったんだ。もう10万ドルもらえないなら契約はしないぞって。エージェントは『早くイエスって言えよ!』って感じだったけど、動物園をやっていくための請求書が山のようにたまっていたからね(笑)」

物語の舞台がアメリカになり、妻が亡くなったタイミングが変わっているなど、映画化にあたって様々な脚色がなされているが、「僕の本も映画も根底にあるエッセンスは同じ」とミーは太鼓判を押す。「ある家族が力を合わせてなにかを乗り越えるというポジティブな物語なんだ。ただ映画と違って、僕の兄弟も息子も動物園にまつわる冒険をすごく応援してくれたんだけどね。でも映画にはすごく満足しているし、マット・デイモンは本当に素晴らしい。この映画を観るたびに、観客が彼の演技に惹きこまれていくのがわかるんだ。マットが演じているのが僕だっていう現実には、いつまで経っても慣れないよ」

多くのトラブルを乗り越えて開園にこぎつけた動物園の経営は今のところ順調で、絶滅危惧種の保護や野生に戻す試みにも積極的に取り組んでいるという。『幸せへのキセキ』が公開されることで、ミーの“ダートムーア動物公園”を訪れる日本人も増えるに違いない。

取材・文:村山章

『幸せへのキセキ』
6月8日(金)全国ロードショー