森山未來

昨年、芥川賞を受賞した西村賢太の小説を気鋭、山下敦弘監督が映画化する『苦役列車』。本作が7月14日(土)から公開されるのを前に、主人公・北町貫多を演じた森山未來がインタビューに応じた。

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作者の分身とも言える19歳の肉体労働者、貫多は始末に負えないひねくれ者。そんな主人公が初めて体験する青春らしき時間のあれやこれやを、森山は獰猛さと愛らしさが入り混じった絶妙な距離感で体現している。「中学を卒業してから、まともに誰かとかかわったことがなかった貫多は、19歳という年齢でたまたま康子(前田敦子)という女の子と、正二(高良健吾)という男の子と出逢う。それまではひとりだったし、これから先もひとりかもしれない。たとえば“恋愛”や“友達になる”というプロセスを踏んでいない。そんな貫多の“抜け落ち感”を伝えたいと思った。どこか自分のなかだけで完結してしまうところがあるんですよね。一気に卑屈になったり、一気にポジティブになったり」。

とはいえ貫多というキャラクターに対して距離は感じなかったという。「すごく楽しかったです。居心地は悪くなかったし、ヘンに共感する部分も多かった。逞しさをわけてもらうようなところもありました。人って、何かしら守るものがあって強くなる、とよく言われますが、貫多って何も持ってないんですよ。それでも、這いつくばっても堂々と立ってられる強さがある。あの逞しさに『ありがとう』と言いたいですね」。

特異な役でありながら、どこか観客が寄り添いたくなるのは、きっと森山のそんな心持ちによるところも大きいのだろう。「僕はいま、映画や舞台をやらせてもらうことで、なんとか自分を保てている部分があるけれど、もしこれがなかったら、いつだって貫多のようになる自信はあります(笑)。でも、どこかで、たとえどうなったって生きていける、とも思っている。貫多もそうなんですよ」。そう、『苦役列車』は、ふてぶてしくも、まぶしい生命力を感じさせる男の子の物語である。

『苦役列車』

取材・文:相田冬二

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