森山未來、武正晴監督 © 2020「アンダードッグ」製作委員会
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映画『百円の恋』を手がけたチームが6年ぶりに集結して描く新作映画『アンダードッグ』が現在公開されている。

本作は森山未來、北村匠海、勝地涼らをキャストに迎え、人生に見放されてしまった負け犬たちが出会い、リングの上で己の存在を叩きつけながら、次の一歩を見つけ出そうともがく物語だ。

そして本作は、可能な限り不要な説明や過剰な表現を省き、俳優たちの徹底した演技と動き、そして観客の想像力をかきたてる描写で物語が紡がれる“映画館で集中して観たくなる”傑作でもある。

前後編4時間超ながら体感的にはあっという間にクライマックスを迎える本作はいかにして生まれたのか? 武正晴監督と森山未來に話を聞いた。

本作の主人公・末永晃(森山)は、7年前に日本タイトルマッチに出場するも敗れ、現在は“かませ犬”としてリングにあがり、引退することもできずに深夜のジムでひとり練習を続けている。

働いて、誰もいないジムで練習し、負けるとわかっている試合で予想通り負ける日々。そんなある日、晃はプロテストを目指す青年・龍太(北村拓海)や、有名な俳優を親に持つお笑い芸人・宮木(勝地涼)らに出会い、彼らとリングで拳を交える。勝てない、降りるに降りられない、前に進めない男たちの人生が交差する。

『アンダードッグ』 © 2020「アンダードッグ」製作委員会

ボクサーの“日常”を描きたい

「最初にシナリオを読んだときに、これに副題をつけるとしたら"ボクサーの日常”だろうと思った」と武監督は振り返る。

「ボクシングを見せるのではなく、ボクサーの食生活だったり、試合の前の日は何をしているのか、日常のちょっとしたことを描く……これは嘘をつけないなという恐怖感がありましたね」

そこで俳優陣はハードなトレーニングを積みながら、単に試合シーンを撮るためだけの訓練ではなく、ボクサーの日常を描く準備を重ねていった。

「演じるまでボクシングのことをよく知らなかった」と語る森山は「だからトレーニングもそうですけど、ボクシングのドキュメンタリーを観たりして、技術より前にまず“ボクサーとして生きる人たちの生き様”を勉強して、それを机上だけで終わらないように実際に稽古をする中で殴って殴られて身体でも感じる中で、“どうしてボクサーとしての人生を選ぶのか?”が身体にどんどん落ちてくる感覚はありました」という。

「だから森山さんをはじめとする演者さん、トレーナーさんと慎重に“試合前の晃は何食ってるんだろう? 試合前じゃない日常の晃は何食ってんだ?”って感じで細かなディテールに対する気遣いを大事にしたんです。その上でタイトルにもなってますけど、“アンダードッグ=かませ犬”的な人の日常ですよね。晃はボクシングだけでメシを食えないだろうなと。ひとつの仕事だけでは生きていけない人たちが日本にはたくさんいるわけで、そういう厳しい世界を晃を通して見てみようとしました」(武監督)