染谷将太

男女の性器が入れ替わる斬新なアイデアで恋とセックスの根源的関係を描く、異色の青春ラブストーリー『恋に至る病』。本作に出演した染谷将太が、木村承子監督が提示した強烈な世界観に圧倒されながらも、自分なりに答えを出したという本作のテーマについて語った。

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新人監督の木村承子氏が、第21回ぴあフィルムフェスティバルのスカラシップを得て撮り上げた長編デビュー作。超絶妄想少女の女子高生ツブラ(我妻三輪子)と彼女が好意を抱く高校の生物教師マドカ(斉藤陽一郎)の“性器”が突然入れ替わってしまい、ツブラを慕う同級生のエン(佐津川愛美)と彼女を追いかけるマル(染谷)の四角関係を軸に、恋愛にまつわる人同士のコミュニケーションについて問う一作だ。染谷は「全体像が最初はイメージできず、撮影中も不思議な感覚でした」と特異な世界観に戸惑ったものの、完成した映画を観て「ツブラは木村監督そのものだと思いました(笑)」と感想を抱いたという。

木村監督のパーソナルな想いを投影したと染谷が指摘するツブラは、愛するマドカと“溶けて混ざってひとつになったらいい”と妄想する、他者とつながりたい主人公だ。そこにある木村監督のメッセージについて、「男女は違う、別々の生きもので、どうしても分かり得ない壁がありますよね。この映画は明確に提示しないけれど、マルを演じる上でも出てきた壁でした」と語る染谷。違うからこそひとつになりたい衝動が生まれるわけだが、「女性特有の葛藤だと僕は思いました。木村監督だからこそ撮れたテーマで、ご本人の意見を僕も聞きたいです(笑)」と主題の解説を木村監督に委ねていた。

本作を読み解くヒントとして、4人の名前―ツブラ、マドカ、エン、マル―が、すべて漢字の“円”で表現できるということを指摘しておきたい。染谷も“女性特有の葛藤”としながらも、「男女が完全に分かり合うことは無理にしても、ぶつかってまとまるしかないってことは考えました(笑)」と自分なりに答えを出した。単なる青春映画の枠を超えて、恋愛コミュニケーションの本質についても言及した本作。公開後の反響が楽しみな意欲作だ。

『恋に至る病』

取材・文・写真:鴇田 崇