<家電激戦区を歩く>東京・池袋(4) 新OSでパソコン活性化に期待 「どこでもつながる環境」がカギに

2012.12.11 11:14配信
ヤマダ電機LABI1日本総本店池袋ではウルトラブックの展示が充実

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によれば、10月のノートパソコンの販売台数は前年同月比97.4%だった。10月末に発売された日本マイクロソフトの新OS、Windows 8の初速はいま一つのようだが、年末の商戦期に向けて家電量販店はパソコンやビジネスソフトの販売に力を入れている。また、スマートフォンやタブレット端末のユーザーの増加に伴って、外出先でも高速通信でネットワークにつながる環境をつくるモバイルWi-Fiルータは好調を維持している。東京・池袋の家電量販店に、ノートパソコン、ビジネスソフト、モバイルWi-Fiルータの3商品の売れ行きを聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

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<売れ筋商品>

●【ノートパソコン】

モバイル性をアピール Windows 8の操作の快適性を伝える

東京・池袋の家電量販店担当者が口を揃えて言うのは、パソコンを目当てに池袋を訪れるのは、会社員や大学生の男性が多いということ。ほとんどがパソコンの扱いに慣れた中級者以上で、それぞれの機種の機能について詳しく質問してくるという。最近は、インテルが提唱する新しいノートパソコン、ウルトラブックの存在が浸透しつつあることと、Windows 8の登場で、女性や高齢者も増えつつある。こうした層が来店するヤマダ電機のLABI1日本総本店池袋やビックカメラの池袋本店パソコン館では、パソコンの知識に長けたスタッフを配置し、さまざまな層の要望に応える接客体制を整えている。

LABI1日本総本店池袋で、とくに力を入れているのがウルトラブックだ。日本最大級のコーナーを設け、さまざまなメーカーの機種を並べている。とくにカラーバリエーションの展示を充実させたことが、女性購入者の増加につながっているようだ。渡辺宏紀店長は、「パソコンが売れることによって周辺機器やサプライ品の販売にもつながる」と、パソコンが同店の稼ぎ頭になっていることを認める。

ビックカメラの池袋本店パソコン館では、Windows 8搭載パソコンの発売に合わせてエレベータ前に充実した体験コーナーを設置し、販売増につなげている。さまざまな機種を操作することができ、スタッフが親切に使い方を説明していることもあって、比較的年配のお客様が多いようだ。宮田貴広店長代理は、「キーボードに不慣れなお客様でも、タッチパネル式のWindows 8でパソコンを使いこなせるようになると説明している」という。Windows 8搭載パソコンの購入者は「クイックレクチャー」や「データ移行」など、サポートサービスへの加入率が高く、さらに利益を生む。また、ウルトラブックも人気が高まっており、「とくに学生が購入している」とのことだ。

●【ビジネスソフト】

1フロアまるごとのソフト売り場 丁寧な説明によって販売は順調

インターネットのダウンロード販売などで、家電量販店のビジネスソフト販売が厳しい状況に置かれてから久しい。しかし、ビックカメラの池袋本店パソコン館は、4階の1フロア全体をビジネスソフト売り場として展開。PCソフトコーナーの豊城達久主任は、「販売は決して縮小してはいない。むしろ順調だ」といい切る。

もちろん、販売が順調なのは、各コーナーで工夫しているから。高価なソフトや使い方が難しいソフトに関しては、体験コーナーを設けて試してもらう。多くのメーカーが製品を発売しているジャンルに関しては、一つひとつの特徴をスタッフが丁寧に説明する。豊城主任は、「ビジネスソフトを有効活用してもらうことによって、お客様にパソコンを最大限に生かす方法をお伝えしている」という。ビジネスソフト販売での取り組みが、パソコンの販売にも寄与しているようだ。

また、「インターネットのダウンロード販売よりも、店で購入したほうが実際は安い」ともいう。セキュリティソフトなど、とくに多くのユーザーが使うソフトは目玉商品として低価格で販売するキャンペーンを頻繁に実施しているそうだ。実店舗のほうが安いというイメージを印象づけるとともに、「来店していただいたお客様にメリットを提供したい」ということで実現した。

最近の売れ筋は、「運動会シーズンの秋は、動画編集ソフトが売れた。また、データ保護の意識の高まりで、バックアップソフトも人気が出てきている」としている。

●【モバイルWi-Fiルータ】

モバイル需要で順調な販売 家庭でのメイン回線にも

ビックカメラの池袋本店パソコン館とヤマダ電機のLABI1日本総本店とも、スマートフォンやタブレット端末の順調な販売に伴ってモバイルWi-Fiルータが好調だ。ビックカメラ池袋本店パソコン館の宮田店長代理によれば、「料金プランが安く、高速化が進んでいることがモバイルWi-Fiルータのユーザー層を広げている」という。今では、受信時で最大75 Mbps、送信時で最大25Mbpsという高速データ通信対応のモバイルWi-Fiルータが出てきている。また、1台で複数台の端末をインターネットに接続できるテザリングも定着しつつある。「お客様のなかには、家庭内で使っていたADSLからモバイルWi-Fiルータの契約に乗り換えて、メインの通信回線として使う方もいらっしゃる」という。

LABI1日本総本店池袋の地上1階に設置しているスマートフォンコーナーは、日本でも最大級の売り場として、連日、来店客で賑わっている。「モバイルWi-Fiルータについて詳しく教えてほしいというお客様が増えている」(LABI1日本総本店池袋のスタッフ)とのことで、携帯電話をスマートフォンに乗り換える際にモバイルWi-Fiルータとセットで購入するお客様も多いそうだ。

モバイルWi-Fiルータは、これから先、まだまだ需要が増える可能性がある。新たな回線契約の獲得にもつながることから、家電量販店にとってはビジネスとして旨味がある。

■アナリストに聞く「売れる理由」

BCNの道越一郎・エグゼクティブアナリストは、ノートパソコン市場を「タブレット端末によって市場は縮小傾向にある」と分析する。10月のパソコンのタイプ別販売台数構成比は、ノートPCが65.8%、デスクトップPCが14.7%、タブレット端末が19.5%とタブレット端末がデスクトップPCを上回った。背景には、「メールやインターネットなど、パソコンの使い方が限定的になってきた」ということがある。パソコン販売の減少に伴って、「以前から厳しいといわれていたビジネスソフトは、ますます販売が鈍化するだろう」とみる。モバイルWi-Fiルータは、「テザリング搭載のスマートフォンが増えていることで、専用端末の販売が縮小するが、ユーザーが『いつでも、どこでも』つながる環境を求めている」という。

このような状況を踏まえ、「今後は、ハード、ソフト、回線を単体で提供する従来のかたちではない新しいビジネスモデルをメーカーが構築するべき」と指摘する。

また、「高速回線がいつも自由に使えて、何らかの情報端末を持ち歩いているという環境が前提。据え置きのパソコンを軸に考えるのではなく、モバイル環境を軸としてアプリやサービスを提供し、それにふさわしいハードを提案していくことが求められる」と語った。

●家電激戦区「池袋」を歩いて

国内第2の家電量販市場である池袋では、業界2位のビックカメラが6店舗で専門店の集合体を展開。業界1位のヤマダ電機は、わが国屈指の大型店舗、LABI1日本総本店池袋を構える。激しい主導権争いを繰り広げていることは間違いないが、一方で大手2社による競争激化によって家電量販の街として活性化したと捉えることができる。両社とも、池袋を販売戦略上の最重要地域に位置づけていることがみて取れる。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年12月3日付 vol.1459より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは

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