2014年、秋

【ソウル乙支路3街】2014年、右手のレンガ倉庫が壊され、新生「満船HOF」の新たな店舗となる

昔のままの姿で営業を続けてきた「満船HOF」のオーナーが、別の商魂たくましいオーナーに店を譲った。

店の前でレトロな大道具として機能してきたレンガ倉庫が撤去され、新生「満船HOF」の店舗になった。この頃から、ノガリ横丁の枯れ味は失われていく。

2016年

【ソウル乙支路3街】「OBベオ」の入口の右手に、「ソウル未来遺産」のプレートが掲示された

一時期、路上飲みが禁止され、横丁の灯も消えるかと思われたが、すぐに復活してホッとする。

最古参の「OBベオ」をはじめとするこの一帯がソウル市の「未来遺産」に認定されたり、ニュートロ(ニューレトロの略称)と呼ばれる懐古趣味ブームが起きたりして、若者が乙支路3街に集まり始める。

2018年~2019年

【ソウル乙支路3街】ノガリ横丁の北側にある路地には、若者向けの飲食店が続々登場。この路地にある飲食店ではBTSのビデオクリップも撮影された

この頃から毎年5月にビアホール祭り(生ビール1杯1000ウォン)が行われるようになり、横丁は活況を呈する。

しかし、新生「満船HOF」の勢力拡大のために、ビルの大家が「OBベオ」に立ち退きを命じたため、存亡の危機に。長年のファンやこの店の歴史的価値に理解を示す市民団体が立ち退き反対運動を始める。

それをよそに、ノガリ横丁には若者たちがどんどん押し寄せ、金土日ともなると通りはすべて簡易テーブルで埋め尽くされるようになった。

2017年にはリュ・スンリョンとシム・ウンギョンが親子を演じた映画『サイコキネシス 念力』のラストシーンが「満船HOF」前で撮影され、2018年に公開された。

同年、「満船HOF」は本店の周辺にさらに新店舗を開業し、ノガリ横丁総満船HOF化を進めていった。

これまで、ノガリ横丁周辺の路地には、中高年向けのこぢんまりとした飲食店がぽつぽつある程度だったが、この賑わいを見て誰もが商機ありと踏んだらしく、若者向けのおしゃれな中華料理店や日本風居酒屋の開業が相次いだ。

(つづく)

フォトギャラリー「ノガリ横丁」の新しい風景を写真で見る
  • 【ソウル乙支路3街】生ビールとファンテ(干し鱈)。かつての「OBベオ」の店内で
  • 【ソウル乙支路3街】冬になると、ノガリ横丁にはテントの花が咲き、寒風に吹かれずに外飲み気分を味わうことができる
  • 【ソウル乙支路3街】まもなくブロックごと姿を消すビアホール「ミュンヘン」
  • 【ソウル乙支路3街】「満船HOF」が撤去されたあとも残る、「満船HOF」に対する抵抗運動の横断幕
  • 【ソウル乙支路3街】2021年の「満船HOF」本店前。そのけばけばしい店構えからは、この横丁の歴史に対するリスペクトがみじんも感じられない

チョン・ウンスク 「忘れられない韓国映画・ドラマの名優たち」オンライン講座開催

映画やドラマで長く活躍し、数々の名作を生み出している俳優の魅力についてお話します。

日時:11月19日(土)18時半~20時

語り手:ソウル在住の紀行作家 チョン・ウンスク、韓国関連書籍の企画編集者 山下龍夫

詳細とお申し込みは朝日カルチャ―センターの公式サイトまで

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。