「ソルヌン」の勝又成さんとムン・ヨンヒさん

ドラマや映画を観て韓国の食べ物に興味をもった人の多くが、本場でそれを食べることを楽しみにしている。

フォトギャラリー激ウマ平壌冷麺!「ソルヌン」のメニュー&お店の雰囲気
  • 茹でた麺を冷水で何度も洗って器に丸く盛り、その上に牛肉、豚肉、鶏肉、キュウリ、ダイコンの薄切り、錦糸卵、松の実などがトッピングされた『ソルヌン』の冷麺
  • 『ソルヌン』のテジコギピョニュク(豚肉スライス/2,000円)
  • 『ソルヌン』の周辺駅は、京成稲毛駅、稲毛海岸駅、稲毛駅の3つだが、いちばん近いのは京成稲毛駅で徒歩約8分
  • 『ソルヌン』にはカウンター席が8つあるので一人でも利用しやすい
  • 「ソルヌン」の勝又成さんとムン・ヨンヒさん

冷麺もそのひとつだが、そのルーツは北朝鮮なので現地で食べることは容易でない。

しかし、本稿で紹介する「ソルヌン」は、平壌で冷麺を作っていた一家がソウルで開業して成功し、日本で支店を出したばかりの北朝鮮料理店だ。

今回は、本場平壌はもちろん、中国の北朝鮮レストラン、ソウルや仁川の専門店で冷麺を食べ歩いたフリー編集者に話題の店をレポートしてもらった。

日本の焼肉屋さんの冷麺とまったく違う!

日本では主に焼肉の〆として食べられている冷麺。

韓国の料理だと思っている人がいるかもしれないが、南北に分断された朝鮮半島の北側、朝鮮民主主義人民共和国(通称、北朝鮮)の食べ物だ。

冷麺にもいろいろあるのだが、今回取り上げるのは水冷麺(ムルネンミョン)と呼ばれる冷たいスープの麺料理。その故郷は北朝鮮の首都、平壌である。

日本の人が韓国に行き、朝鮮戦争のとき北側から南側に避難してきた人たちが開いた店で平壌冷麺を食べると、たいてい「えっ!」という顔をする。

スープがあまりにも淡白だからだ。ラーメンのスープや関東風の蕎麦つゆのしょっぱさに慣れているのと、多くの人が朝鮮半島の料理に対して、「赤くて、辛くて、しょっぱい」という先入観をもっているからだろう。

しかし、そのあと、牛肉などの材料から生まれるほのかなダシの風味が、唐辛子などの刺激物を多く摂らない舌にとても合うことに気づく。しかも、麺は蕎麦粉をメインとしているので親しみやすい。

筆者は1990年代後半、ソウルの専門店で初めて平壌冷麺を食べ、2001年には日本の大手旅行会社のツアーで平壌に行き、有名な冷麺専門店「玉流館」の支店「玉流食堂」で平壌冷麺を食べた。

その経験から言うと、日本の食べ物で平壌冷麺に近いと感じるのは「すだち蕎麦」だ。

もちろん、すだち蕎麦のダシは鰹節や昆布、煮干し(いりこ)などの魚介系。平壌冷麺のダシは牛豚鶏などの肉系という違いはあるが、ともに清涼感が持ち味という点で共通している。

スープと麺の再現に試行錯誤

『ソルヌン』の平壌冷麺。1,200円

3月22日、千葉市稲毛にオープンした「ソルヌン」は、北朝鮮から韓国に来たムン・ヨンヒさんと夫の勝又成さんが、平壌の高麗ホテルのレストランで料理をしていたお母さんといっしょにソウルで始めた冷麺専門店の支店だ。

オープン数日前に試食させてもらったのだが、勝又さんは、「ソウルの店の冷麺と極力近いものを作るのに苦労した」と話してくれた。

牛肉・牛骨、豚肉・豚骨、鶏肉でダシをとるスープは、ソウルではヨンヒさんのお母さんが担当していたが、勝又さんは微妙に塩を足したり引いたりして、韓国のお客さんに喜んでもらえるよう試行錯誤したという。結果、日本ではソウルよりも塩味がわずかに強くなっている。

ヨンヒさんは、「スープに加える醤油は日本のものは甘味が強いので、塩分含有率がやや高く、色が薄い韓国産を使っています。塩も韓国産の粗塩です」と、教えてくれた。

麺はソウルでは蕎麦粉にでんぷん粉を加えたものを手でこね、厨房に設置された製麺機で押し出していた。

しかし、日本ではその製麺機が規格違いで使用できない。そこでソウルの業者にレシピを伝えて作ってもらい、それを乾麺にして送ってもらっているという。

本場の北朝鮮でも乾麺はよく使われているそうだ。筆者は一年前、ソウルの「ソルヌン」でも平壌冷麺を食べているが、大きなちがいは感じられなかった。

気になる値段だが、平壌冷麺はなんと1,200円で提供するという。

ソウルの店では15,000ウォン(約1,700円)するので心配になったが、勝又さんは、「自分が生まれ育った千葉の人や、通りがかりのおじいちゃん、おばあちゃんに気軽に平壌冷麺を味わってもらいたいので」と、泣かせることを言う。