a new musical『SONG WRITERS』稽古場より。中川晃教 a new musical『SONG WRITERS』稽古場より。中川晃教

日本を代表する作詞家・森雪之丞が脚本・作詞・音楽プロデュースを担い、演出家としても定評のある岸谷五朗が演出を手がけるオリジナル・ミュージカル『SONG WRITERS』が10月5日、シアタークリエで開幕する。ミュージカルをこよなく愛する両者のタッグにより生まれた本作は、ブロードウェイを舞台に繰り広げられるミュージカル・クリエイターたちの物語だ。“世界が驚愕するミュージカルを創る!”と夢に邁進する作詞家エディ役に屋良朝幸、エディの相棒でちょっと気弱な作曲家ピーター役に中川晃教、魅惑の歌声を持つ女優の卵マリー役に島袋寛子など、人気と実力を兼ね備えた魅力の顔合わせが実現。中川がキャラクターそのままに、劇中のナンバー2曲を作曲している点にも注目だ。演出家・岸谷が熱く指揮をとる、ある日の稽古場を訪れた。

a new musical『SONG WRITERS』チケット情報

立ち稽古は、中川によるピアノの弾き語りからスタート。全員が本番さながらのテンションの高さと集中力で歌い踊り、ノンストップで第一幕を進めていく。ピーターの部屋に飛び込んできて、傍若無人に自分のペースに巻き込んでいくエディ。そこに音楽ディレクター・ニック(武田真治)が吉報を持って現れ、さらには歌姫マリーも登場。皆で「夢へ一歩前進か!?」と盛り上がる、スピード感あふれる楽しい幕開きだ。天真爛漫で快活な屋良エディとナイーブな中川ピーターが絶妙のコンビバランスで、雰囲気の良さを見せつける。島袋がとぼけた愛らしさで惹きつけ、武田が独特の個性を打ち出して稽古場を沸かす。そんなキャスト陣の息の合った様子を、演出席で岸谷が頷きながら注視し、森雪之丞が嬉しそうに見つめていた。一方、NY市警の刑事ジミー(泉見洋平)とクラブ歌手パティ(藤林美沙)のシーンはどこか謎めいていてドラマチック。それもそのはず、このふたりはエディが書く物語の登場人物なのだ。展開が気に食わなければ何度でも書き換えられるはずだったが、いつしか現実と虚構が入り乱れて……。イタリア系マフィアの登場など、気になる要素が次から次へと噴出し、物語は思わぬ方向へと突き進む。

駆け抜けるように第一幕の通し稽古が終わり、岸谷が各シーンを丁寧に振り返ってチェック。屋良に向かって「この台詞はもっと調子に乗っちゃってもいいかな。歌うように…」と言い、自ら実演してみせる。キャラクターの持ち味をわかりやすく示すディレクションは、俳優ならでは。屋良を始めとするキャスト全員が岸谷の言葉を素早く飲み込み、稽古はテンポよく進んでいった。情感豊かに響くナンバーと圧倒的なパワーで迫るダンス、そして驚きのストーリー展開。“ミュージカル好き”たちの情熱が生み出した日本の本格オリジナル・ミュージカル、その斬新な興奮をいち早く劇場で味わいたい。

公演は10月5日(土)から30日(水)まで東京・シアタークリエ、11月12日(火)愛知県芸術劇場 大ホール、11月16日(土)・17日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて。チケット発売中。

取材・文 上野紀子