鬼女に代表される特定班の有志は、まずネット上に魚拓を取ってからSNSの過去ログ(書き込み履歴)調査を開始することが多いようだ。

ここでいう魚拓とは、当事者がアカウントを消して逃亡した時に備えて証拠のツイートなどを保全しておくサイトのこと。「ツイッ拓」がその一例だ。

証拠保全しながらログをたどっていくと、過去の書き込みから当事者のさまざまな情報が見えてくる。あとはそこから芋づる式に辿っていくだけ。ツイッターでフルネームと誕生日を取得→mixiやフェイスブックで同名のユーザーを特定→さらに深い個人情報まで斬り込んでいく……という具合だ。この調査の進行度は常に2ちゃんねるなどの関連スレッドにアップされ、多くのネット民が情報共有しながら効率よく調べを進めていく。

SNSを取っかかりにした個人情報収集は、冒頭のしまむら土下座事件をはじめ、ステーキハウス「ブロンコビリー」を閉店に追いやったバイトテロ事件、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」で迷惑行為を繰り返した大学生の事件など、ほとんどの事件で有効に活用されている。これらの当事者はありとあらゆる個人情報を割り出され、拡散させられたあげく、訴訟・逮捕・謝罪・停学・内定取り消しといった厳しいペナルティが課せられる末路となった。
 


鬼女たちが頼るのはSNSのログだけではない。いつもは「役立たず」「未成年や特定の国籍に配慮しすぎ」と蔑視しているマスコミをも積極的に活用している。その一例は2011年に起きた大津いじめ自殺事件。あるテレビ番組でこの件の関連書類が画面に映ったとき、黒塗りの修正が不十分だったため関係者名が透けて見える状態だったのだ。ここから2ちゃんねるでの「犯人晒し」は一気にヒートアップ。加害者(未成年)の氏名、写真、親の勤め先まで特定・拡散される事態となった。

また、2012年に報道され、学校側のあまりに不誠実な対応が問題となった仙台の高校での根性焼き事件。マスコミは具体的な学校名を伏せて報道したが、ニュース画面に映った背景(建物)から2ちゃんねるの住人たちが特定に成功した。このときに利用されたのがGoogleの提供するストリートビュー機能。おそらく報道で伝えられた「仙台市内の私立高校」という断片的ヒントをもとに人海戦術で総ざらいし、同じ風景のストリートビューを探し出したものと思われる。とんでもない執念である。

2ちゃんねる最強の調査力を誇る鬼女には他にもさまざまな伝説があり、「ニュースでモザイクがかかっていたにも関わらず木々の並びだけで場所特定した」「鉄棒の長さと高さだけから学校名を特定した」「鬼女板にスレッドが立って70分後にはもう住所特定していた」など、もはや“あんたらどこの国の秘密諜報員だよ”と言いたくなるほどだ。