萩原さんと八木さんに“ひらきよ”をお任せしていたら安心

「劇場版」 ©2023 劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会

――劇場版を観たあとに、戻ってシーズン1から観返してみたのですが、個人的にシーズン1は平良の話、シーズン2は清居の話、劇場版は2人の話のような印象を持ちました。

観てくださった方が感じたものがすべてだと思うので、それも正解だと思います。ただ一応、私の中ではちょっと違う認識をしていて。

――ぜひ聞かせてください。

私は、シーズン1は、実は清居の話かなと思っていて。どういうことかと言うと、“きもうざ”で「清居、好きだ、好きだ」と言う平良に対して、「てめえが追いかけて来い」みたいな、強がるしかなかった清居が、「こいつだったら」「こいつは違うかもしれない」という想いを抱いて、ちょっとずつ「どうせ」って思っていた世界が変わっていくんです。そうやって清居が素直になる話だと思ったんです。

「劇場版」 ©2023 劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会

――なるほど。

平良の視点から物語は始まりますけど、最終的に誰が一番変わったかと言うと、清居だと思うんです。それでタイトルが『美しい彼』ですから、すごく合っているなと。

シーズン2は、劇場版への序章というか、清居が平良を引っ張り上げる、自分と同じ目線で向き合うことを求める話で、劇場版はそれによる平良の成長物語なのかと。劇場版では平良が一番変わったと思うんです。

平良は「清居の邪魔をすることは、俺はしない」というスタンスで、清居に自分から「話そう」と持ち掛けるなんておこがましいと思っているんですけど、劇場版ではそんな平良が「清居、話したい」って言うんです。そこですごく平良の成長を感じました。

――確かにそうですね。とても納得できました。

でも、最初にも言いましたけど、観てくださった方がそれぞれのキャラクターに感情移入をしてくださったからこそ、感じ取ることも違うと思うので、皆さんそれぞれの観方が合っていると思います。

「シーズン2」 ©「美しい彼」製作委員会S2・MBS

――萩原さん、八木さんの演技に対して、シーズン1で作り上げられたものがあるからこそ、続編で感じたことはありますか。

萩原さんと八木さんに“ひらきよ”をお任せしていたら安心という想いは強かったです。それこそシーズン1のときは、八木さんはお芝居の経験がほとんどなかったので、粘ったりすることもありましたし、萩原さんのお芝居を受けて開花していくところもたくさん見ました。

だからこそ話し合いをすることも多かったんですけど、続編はこちらから多くを語らなくてもお二人ともわかっていることも多かったですし、個々に話すというより、(監督を含めた)3人で話すことが増えました。

――「お任せしていたら安心」という言葉もありましたが、特にあの2人だったからこそ描けたと思うような劇場版でのシーンはありますか。

すべてのシーンがそうとも言えるんですけど、特に挙げるとしたら、平良がカメラを持って清居を撮影するシーンは、完全に1シーンまるまるお二人にお任せしたので、あれは平良である萩原さんにしか撮れない清居だったと思いますし、平良にしか見せない清居である八木さんの表情で、お二人にしかできない会話だったと思います。

「劇場版」 ©2023 劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会

――物語の後半、プライベートではなく仕事として平良が清居を撮影するシーンですね。そこは最初からそのような方法で撮ろうと考えていたのですか。

クランクイン前の準備期間中に決めました。脚本を読みながら、ト書きに“シャッターを切り続ける平良”とあって、どう撮ろうか考えていたときに、「実際に萩原さんに撮ってもらうのがいいんじゃないか」と思いました。

一つの挑戦にはなると思いましたけど、それが正しいことのような気がして。やっぱり萩原さんが一番平良のことはわかっているし、八木さんが清居のことはわかっているので。凪良先生は置いておいてですよ。あの現場においてでのお話です。

なので、確か衣装合わせのときだったような、とにかくクランクインの前に「このシーンのカメラはお任せしたい」とお伝えしました。

――カメラのレンズを通して見えてる清居のシーンは、すべて萩原さんが撮影しているんですか。

劇場版はそうです。一眼レフカメラのファインダーに、(動画撮影用の)カメラをつけているんです。だからあの時の萩原さんはカメラを2台持っています。あのセッティング自体、わりとちゃんと準備をしないとできないものなんです。

撮ってる間に萩原さんがつまずいて、途中からカメラのアングルが少し右に傾いているんですけど、それも生っぽくて素敵だなと思ったので、そのまま編集しました。シャッターを切る瞬間もリアルに萩原さんが切った瞬間です。

――それであの表情が撮れているってすごいですね。

萩原さんだからできたことですね。